ごはんづくりのNEW問答No.06
「いつも自分で献立を考えて料理をするので、『今日のごはん何だろう?』というワクワク感がありません。自分で作ったものが想像を超えてくることはなく、食べる前から味がわかっている……。たまには他の誰かが作ったごはんが食べたいです。」(Hさん 30代)
たまには「自分が作る」を
お休みして、気分転換を。
今回の回答者
料理家 田内しょうこさん
秘技! 冷食、外食、手巻き寿司。
日々のごはんを作っているみなさん、うなずきながら読んだのではないでしょうか。
きっと、自分でごはんのことを考えて決めることにすら疲れてしまっているのかなと想像しました。日々の料理に飽き飽きしているからこその「たまには違うもん食べたい!」という心の叫びだと……。
だとすると月並みですが、冷凍食品など簡単にできるものや、家で作れない味のものをたまに混ぜる、外食をする、が手っ取り早い方法でしょうか。
でき上がった料理に驚きがないなら、食卓で仕上げながら食べる手巻き寿司や鍋料理、たこ焼きのようなホットプレートものは、ライブ感があっておすすめです。
手巻き寿司って、別にお刺身ばかりでなく、そぼろや缶詰、カニカマでもしらすでも漬け物でも。その場の思いつきで巻いて食べれば、その味はもう一期一会! 鍋ならたれや薬味を変えて。たこ焼きなら気分で具材を加えて。目先が変わって、想像した以上のおいしさに出会える可能性も大です。
「並べてもらう」も
案外うれしい。
もしも誰か頼める人がいるならば、「何でもいいから、人が作ってくれたものを食べたい」と伝えてみるのも手。目玉焼きでも、焼きそばでも、インスタントラーメンでもいいから作ってもらえるのがうれしい、と猛アピールしてみましょう。
その人が料理が苦手なら、できあいのものでも何でもよいので用意してもらい、テーブルに並べるまでやってもらう。この「並べるまで」がポイント。ごはんって作るだけじゃなくて、食卓の支度も大変ですもんね。並べてもらって「何を用意してくれたんだろう!」とテーブルにつくだけでも、ちょっとは気が晴れるかもしれません。
そんなことが続くと、ふと「ああ自分が作ったものが食べたい」と思い始めたりもします。これは、大学時代に寮のごはんを食べていた私の経験談。入院したときも同じでした。最初は上げ膳据え膳でうれしいのだけれど、続くとやっぱり「たまには自分で好きなもの選んで食べたい!」と思ってしまうんですね。人間ってないものねだりですよね。
ごはん作りって、日々のことでつらくもありますが、イコール食べるものを自分で決められるということ。それは本当に贅沢で幸せなことで、その価値は失ったときに初めて気づいたりします。そしてそれは、料理を「作る人」だけが持っている特権だな~とも思います。
うまく気分転換をして自分の機嫌をとりながら、ぼちぼちとやっていきたいですね。
うれしいひと皿
子どもがふたりいるわが家。少しずつ料理に興味を持ってもらうのもひとつの手だと思い、「お手伝いしたい」はできるだけやってもらうようにしていました(忙しいときは面倒ですが……笑)。
それを積み重ねていくと、「何か作りたい」と言い出す日は思いのほか早くやってきます。そうなったら、世界で食べる何よりもおいしいごはんが食卓に。
だって、子どもが作ってくれるものなら、みそ汁ひとつだってうれしいものです。(写真は、うちの子が作ったパンケーキです。)