地域には、給食が出ない夏休みに十分な栄養が取れない子どもや、地域の偏見から相談できないひとり親が、めずらしくなくなっています。ことし4月からは、生活困窮者自立支援制度が導入されましたがさまざまな課題を抱えており、制度によってさらに生活が苦しくなる家庭も出てきています。
学習会は、これらの現状を知り生協としてできることを考える機会として開催され、パルシステムグループの役職員や関係者などおよそ40名が参加しました。
■届いた食品に「お宝だ!」喜ぶ子どもの姿

「給食のない夏休みは十分な栄養が取りにくい」と話す米山さん |
NPOフードバンク山梨の米山けい子理事長による「子どもの貧困とフードバンク山梨の取り組み」では、これまでの活動からみえてきた実態を中心に報告がありました。フードバンク活動は、ひとり親世帯や失業して仕事が得られないなど、さまざまな事情によって生活保護が受けられない「制度のはざま」にいる世帯へ、食品を提供する支援です。
同NPOが今年3月までに支援してきた2,303人(1,155世帯)のうち、およそ3割にあたる609人が20歳未満の子どもでした。子どもの内訳は、小学生以下が6割おり、年齢の低い子どもを抱える家庭では、親がフルタイムの仕事に就きにくく、貧困に陥りやすい事情が浮かび上がっています。
こうした状況にある子どもたちにとって、給食は栄養ある食事をとれる貴重な機会です。給食のない夏休みは十分な食事が確保できないことから、同NPOは7月から8月にかけて、子どものいる家庭へ重点的に食品を届ける「フードバンクこども支援プロジェクト」をスタートさせました。
プロジェクトには、パルシステムグループも賛同し、物流などの都合で余ってしまった食品などを提供しています。米山理事長は「支援する家庭なかには、具がもやしだけのラーメンを食べている兄弟がいて、届いた食品を『お宝だ』と抱えていました。身近なところに、そんな深刻な貧困があることを知ってください」と訴えました。
■近所に頼れる人がいれば負担軽減できる

丸山さんからはシングルマザーの抱える悩みを紹介 |
NPOしんぐるまざあず・ふぉーらむの丸山裕代理事による「ひとり親家庭にみる子どもの貧困」では、シングルマザーへの支援事例を基に現在の社会制度が抱える課題が提起されました。
シングルマザーからの電話相談を受け付ける同NPOでは、経済的な困窮や、病気、精神的な体調不良のほか、離婚前の相談なども増えているそうです。なかには、地域や職場での偏見が起因し「女性には相談できない」と話すケースも珍しくないとのことでした。
相談者は、気力でなんとか経済をやりくりしている人が多く、将来の生活設計などできる余裕はありません。生活保護を受けるには車を手放さねばなりませんが「通勤に車は不可欠という地域がほとんどです。さまざまな事情でいったん生活保護を受けると、自立までの段階を踏める制度がありません」と丸山理事は問題点を指摘しました。
また経済的な貧困のほか、相談できる人がいない「関係性の貧困」、インターネットなどが活用できず行政の対応も不十分だったことから情報が得られない「知識の貧困」といった複合要素が、それぞれの相談者の生活環境を悪化させているといいます。
国内外の事例を紹介しながら丸山理事は「急病の子どもを預かってくれたり、相談に乗ってくれたりする頼れる人が近所にいるだけで、シングルマザーの負担は大きく軽減できます。行政、地域、企業がつながり、支援の輪を広げる必要があります」と話しました。
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