■産直産地と行政、パルシステムによる農商工消連携
調印式後それぞれの代表が固い握手 |
パルシステム連合会が設立する「北海道十勝食料自給推進協議会」は、地域で生産される資源を有効に活用することで地域を活性化させ、食料自給率向上へつなげるモデル構築を目的に設立します。パルシステムと農協、行政が連携し、産地で生産される農産品の加工商品開発や、食品副産物の有効利用など資源循環型農業の構築などをめざします。
北海道十勝食料自給推進協議会は当面、パルシステムの産直産地である音更町農業協同組合(JAおとふけ)と地元行政の音更町が参加し、国内有数の穀倉地帯である北海道十勝地域で生産される農作物を原料とした商品化を進めることで農商工連携モデルを創出する方針です。
将来的には活動の事例を国内各地にあるパルシステムの産直産地へ広げ、農地や資源を徹底的に利用する構造に転換し、食料輸入を低減させて日本全体の食料自給率向上を図ります。
■3団体の代表による調印式が行われました
あいさつする大塚JAおとふけ組合長 |
調印式および設立総会は12月8日(火)、北海道音更町のふれあい交流館(すずらんど)で開催されました。出席者には参加団体それぞれの関係者のほか、11月2日(火)に設立した「北部九州食料自給推進協議会」からも駆けつけ、あわせて50名が参加しました。
開催に際して参加団体を代表したJAふおとふけの大塚宏明代表理事組合長は「食料農業基地である音更と消費者であるパルシステムが結びつく協議会の設立です。日本のトップモデルとなるよう、さらなる発展を遂げましょう」とあいさつしました。
続いて協定の趣旨を説明したパルシステム連合会の山本伸司常務執行役員は「協定の締結で3者の関係は、これまでの『顔の見える関係』からさらに一歩踏み込みます。生産地と消費地の相互が長期的かつ戦略的に取り組む協定です」と説明しました。
その後大塚代表理事組合長、寺山憲二音更町長、唐笠一雄パルシステム連合会専務理事による調印式が行われました。
■総会ではすべての議案が承認されました
寺山町長は地域活性を期待しました |
総会では、寺山町長が開会のあいさつし「協議会設立により、消費者と生産者が力を合わせて力強い産業をつくりたいと思います。地域活性につながる取り組みが十勝全域へ伝わり、力強い十勝となるべく努力します」と語りました。
また、来賓あいさつでは北海道十勝総合振興局の竹林孝局長が高橋はるみ北海道知事のメッセージを代読し「日豪EPA交渉の要請行動ではパルシステムも応援団として取り組まれ、感謝しています。北海道の農業はわが国の食料農業や国民全体を支えるものです。今回の連携について大いに期待しています」と読み上げました。そのほか、松木謙公衆議院議員、石川知裕衆議院議員からもメッセージが寄せられたことが紹介されました。
総会で提案された議案はすべて満場一致で承認されました。今後は定められた規約や事業計画に基づき、地域原料を使用した加工商品の開発や資源循環型農業の推進、パルシステムの組合員、職員と地域の交流などの事業を計画していきます。
■帯広畜産大美濃名誉教授らによる記念講演
美濃帯広畜産大教授の記念講演 |
総会後、記念講演として唐笠一雄パルシステム連合会専務理事による「今後のパルシステムの挑戦〜消費生協から社会的生協へ」、美濃羊輔帯広畜産大学名誉教授による「都市と農村の共存・共栄〜十勝農業への期待」が行われました。
唐笠専務理事は「1人ひとりができることを出し合い『たすけあいのモデル』を示すことで世の中の流れを変えていくことが次代の生協に求められています」とパルシステムの活動方針を紹介しました。そのうえで産直を通じた農業のあり方や、協議会の位置づけを説明し、「国内の食料自給率を高め、農業を発展させる仕組みを示すためにも、生産者、メーカー、行政、生協が連携し、実践モデルを構築することが必要になります」と協力を呼びかけました。
続いて美濃名誉教授は、協議会設立の意義について解説しました。まず生協が抱える今後の課題として「消費者である組合員の意見を反映し、生産者とのつながりを深める関係をいかにつくりあげるかが今後さらに重要になります」と指摘。一方で音更をはじめとする十勝地域の農業については「豊かさ」「きずな」「自立」「環境」「教育」などのキーワードを掲げ「これらを重視することで消費者とつながり『音更産なら安心』と思われる農作物を提供していくことが重要です」と語りました。
さらに最近報道されているTPP(太平洋経済連携協定)などの貿易自由化について「このまま自由化されれば、農業だけでなく関連する製造業、サービス業が芋づる式に打撃を受けます。その意味でも協議会の設立は、音更にとって安定供給、パルシステムにとって安定調達が実現し、双方ともメリットある関係が築けるのではないでしょうか」と期待しました。
■選果センターと貯蔵施設を見学
貯蔵施設の視察 |
翌日は、JAおとふけの青果集出荷選果センターと小麦や大豆、小豆の貯蔵施設を見学しました。
選果センターには、車輪が人の大きさほどある大型トラクターが並び、北海道農業の規模の大きさがうかがえました。職員の説明では、種まきは通常生産農家で行うのが一般的ですが、JAおとふけでは計画的な生産で安定供給を図るため、JAで種まきを実施しているとのことでした。
また、北海道は本州から離れていることから、鮮度を保つために温度の適正管理を徹底しています。人参には、芯から冷やす真空予冷を取り入れていました。長いもは、箱詰め時の緩衝材として新品のおがくずを使用しています。「建築廃材を使用するところもありますが、廃材には薬品がついている危険性があります。長いもが傷つくリスクもあるため、おがくずを使用しています」との説明に、視察した参加者も商品出荷への徹底さを感じているようでした。
関係者50名が参加しました |
パルシステムからの参加者とともに |
試作品の試食も行われました |
大型トラクターにびっくり |
長いもの貯蔵の様子を確認 |
手作業による大豆の選別 |
【関連リンク】
産直いきいきコミュニティ「加工原料」プロジェクト
JAおとふけ(ファーマーズネット内)
「北部九州食料自給推進協議会」調印式および設立総会を開催しました(2010年11月9日 ニュース)
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