ごはんづくりのNEW問答No.29
「退職した夫と二人暮らし。朝昼晩と毎日三食作るのが辛いです。娘や孫が来る時はさほど苦にならないけれど、夫と二人のときはイライラモヤモヤ。座って待っているだけの夫に『箸ぐらいならべんかい!』思わず叫んでしまいます。」(Sさん 70代)
ちょっとした変化で、暮らしに新しい風を
今回の回答者
スープ作家 有賀薫さん
「見える化」で夫婦ともに使いやすいキッチンに
もしかして私の家をのぞき見しました?と言いたくなるほど同じ状況にびっくりしました。長年のうちに役割分担が固定した夫婦が習慣を変えるのは大変ですよね。言葉で伝えるだけで通じるものではありません。
わが家では環境から変えてみることにしました。まずは「食卓まわりの簡素化と透明化」です。
妻に食事を任せっきりにしている夫は、どうやらキッチンが怖いのです。包丁が、ピーラーが、醤油や片栗粉が、どこにあるかもわからないし、一度では覚え切れない。自分の無力さをつきつけられる気になるので近づきたくないのでしょう。
だから本当に必要な道具や食器だけに絞って、なるべく目につきやすいところに固めておいて、見ればわかるようにしておくのです。私は毎日必ず使う「基本の器」を決めて、それを食器棚の一番取り出しやすいところにまとめました。箸やカップもよく使うものだけ(これが大事!)を見える場所に置いた上で、カップはここが定位置だからね、と繰り返し伝えました。
マヨネーズやからし、七味など夫がよく使う調味料も冷蔵庫の同じ場所にまとめ、見える化しています。こうすることで、「箸とコップを出してもらえる?」「七味欲しかったら自分でね」と気軽に頼めるようになります。
外食を取り入れて、生活にメリハリを
キッチンのアイデアはいろいろありますが、もしかしてご相談者さんは食事の支度だけでなく、お二人の生活そのものにモヤモヤしているのではないでしょうか。
退職して家にいることが増えるシニア夫婦の生活では、凪のような日々が続きます。凪いだ心に風を入れるには、外に出ることです。
私はずっと手作りの食事にこだわっていたのですが、最近、週のうち何食かを外で食べることにしました。ファミレスでもいいのです。大事なのは生活のパターン化をなくすこと。
家で差し向かいになっていると無口になりますが、外に出ると月が満月だったとか、新しい店ができていたとか、そんなことが会話になります。いつも車移動なら歩くのもいいかもしれません。
ちょっとしたことから変化を楽しんでいきましょう。どうぞ仲良く暮らしてくださいね。
キッチンの簡素化・透明化で誰でも使いやすく
(左)塗りの平椀や皿など、プレーンで使いまわしのきくわが家の「基本の器」。食器棚の扉をあけるとここに固まっているので夫も迷わない。
(右)頻度の高いキッチン道具と調味料だけを見える場所に。少なければすぐ見つかる。