ごはんづくりのNEW問答No.27
「パンを焼くのに、オーブントースターの代わりに魚焼きグリルを使っています。そのため、グリルを使わない魚料理しかしたくありません。なんとかならないでしょうか。」(Mさん 30代)
魚料理は、フライパンにお任せしてしまいましょう!
今回の回答者
食文化史研究家 魚柄仁之助さん
フライパンひとつで、魚を蒸し焼きから鉄板焼きに
魚焼きグリルはトースター専用。エライ! 魚を焼いた後のグリルの掃除がだ~い好き!なヒトもそうはいないでしょう。焼き網、受け皿、グリルの内壁の魚脂や臭い…やだやだ。しかしパンを焼くだけならお手入れも簡単ですわな。
さてそーなると魚料理はどーする?「魚は炭の直火焼きがサイコーさ♬」なんて都会のマンション暮らしじゃ「超」がつくくらいゼータクなこと。現代の焼き魚はフライパン焼きが主流になりつつあるのです。
まずはフライパンに、下味をつけた切り身魚や丸ごとの小型の魚を並べて、小さじ一杯の水をたらしてふたをします。これを弱火にかけ、1~2分経ったら焦げないようにフライパンをゆすります。
ふたをしているから、小さじ一杯の水が呼び水となり、蒸気が充満。グリルのような上火がなくても火が通り魚の色が変わってきます。ここでふたを取りフライパンをゆすりながら水気を飛ばすと魚に焦げ目がついて焼き魚っぽく仕上がるんです。
この「魚をゆでるか蒸した後に焦げ目をつける」という調理法、実は江戸時代の文献にも見られる伝統的な技法でした。
フライパンを使えば掃除もらくらく
つまり、魚のフライパン焼きの要点を整理すると、以下の3つが大きなポイントになります。
1. フッ素樹脂加工のコーティングされたフライパンを使う
2.フライパンに蓋をして最初は「蒸す」、最後はふたなしで「焼く」
3.途中でフライパンをゆすって魚の身を動かすこと
そのほかにも、電子レンジで魚肉の中心部まで熱を加えてからフライパンで焦げ目をつけるなどすれば、グリルを使った天火焼きに近い調理ができるのです。
老婆心ながら、汚れたフライパンと蓋は小さく切ったぼろ布か古新聞で汚れをふき取ってから洗えば下水の汚れも減らせますね。
質問者さま、綺麗なグリルでパンを焼き続けてくださいまし。
今回の回答者
食文化史研究家
魚柄仁之助(うおつか・じんのすけ)さん
1956年福岡県生まれ。食文化史研究家。食文化史の研究のなかで身につけた知恵を、自ら日々実践し続けている。著書『うおつか流 食べつくす! 一生使える台所術』(農山漁村文化協会)、『幻の麺料理 再現100品』(青弓社)『台所に敗戦はなかった―戦前・戦後をつなぐ日本食[文庫版]』(筑摩書房)など。