ごはんづくりのNEW問答No.26

「夫が旅立ち、一人暮らしが始まりました。夫からの「おいしい」という言葉のありがたさを感じています。自分のためだけに作る料理、何を作れば……と戸惑います。」(Hさん 60代)
自分の「食べたい」の気持ちを大事に

今回の回答者
自炊料理家 山口祐加さん
大切な人の「おいしい」は何にも代えがたいもの
大切な方を亡くされて、さまざまな思いを経てこられたと思います。食べてくれる人の「おいしい」にはとても力があるのだなぁと、あらためて感じました。
私は30代なので、相談者さんのご質問にお答えするのは少し気が引けてしまうのですが、誠心誠意お答えできればと思っています。
私は以前、「自分のために料理を作れない」という悩みを抱えた方々に対して、3カ月間「自分のための料理」を教えるという料理教室を開いたことがあります。そのなかに、もうすぐ還暦を迎える女性が参加されていて、その方も2カ月前に配偶者の方を亡くされていました。
今までは夫のために作ればよかったのが、相手がいなくなってしまって、料理する気持ちの行き先が宙に浮いてしまったような印象を受けました。言うなれば、運転の仕方は分かるのに、目的地がなくなってしまうような感覚かもしれません。
Hさんがこれからどうやってすこやかに作って食べていくのかを考えたときに、ご自身のために作ってみる方向性と、料理を作る相手を増やしてみる方向性があるかなと思いました。

まずは「食べたいものインタビュー」を自分にしてみましょう
ご自身のために作ってみるのであれば、まずは「食べたいものインタビュー」がおすすめです。ご自身に今食べたいものや、どんな気分かを聞いてみるのです。
具体的な料理名が返ってこなくても、「お魚かお肉、どっちの気分?」「さっぱりとこってり、どっち?」など大まかな質問にしてみると料理のジャンルが絞られていきます。その時の気分にフィットした料理が食べられると心の充足感が感じられると思いますよ。
あるいは、今度はお友達のために料理を作ってみるのはいかがでしょうか?たとえば、毎週末に気心の知れたお友達の家に集まって、交互にごはんを作りあったり、作りおきを一緒に仕込んで分け合ったりすると、いろんな味を知れて面白そうですし、新たな発見もありそうです。
ご自身の心に、これからどんな食事がしたいかをぜひ一度尋ねてみてください。

「ひとり小料理屋さん」を開くのもおすすめです
私が一人のときによくやるのは、「ひとり小料理屋さん」です。小料理屋さんのように、まずはサラダ、次は焼いたお野菜、最後にメインの焼いたお魚とお味噌汁のように、コース仕立てで1品ずつ作って食べてを繰り返すのです。
私はお腹が空いてしまうと何もできなくなってしまう性分であることと、食事を全部揃えてから食べると途中でお腹いっぱいになってしまうことが多々あり、編み出した策がこのスタイルです。だらだら食事をとっているように見えるかもしれませんが、誰にも見られずに、好きに食べられるのがひとりごはんの最大の魅力です。よかったらお試しくださいね。