パルシステムごはん部

ごはんづくりのNEW問答No.23

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2025.7.28

「肉にこだわりのある息子。かたい肉や脂っこい肉を嫌がります。肉の選び方と調理の工夫を教えてください。」(Fさん 40代)

A -anser-

まずは部位の特性を知りましょう。
おのずと対処法が見えてきます。

今回の回答者
料理家 樋口直哉さん

肉はどうしてかたくなる?

かたい肉や脂っぽい肉が嫌とのこと。それらは苦手な人が多いので、ここで日本でいちばん多く消費されている食肉である鶏肉を例に、どんな風にお肉を選んだらいいかいっしょに考えていきましょう。

鶏肉にはモモ肉、ムネ肉、手羽などの部位がありますが、モモ肉は脂肪分が多く、ムネ肉は少なめ。

よく動かす部位は筋=結合組織コラーゲンが豊富です。コラーゲンはじっくり加熱しないとやわらかくならないので、例えば手羽は比較的かたく、長い時間加熱する料理に向いています。

モモ肉を料理するときは皮目からじっくり焼くなどして、脂を抜きながら加熱するといいでしょう。

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おすすめは衣付け&塩こうじ

以上を考えると、選ぶべき鶏肉の部位は脂肪が少なく、さっぱりしたムネ肉ということになります。

ただ、ムネ肉は加熱しすぎるとぱさついて、やはりかたくなりがち。ムネ肉は筋繊維を包む膜が薄く、加熱しすぎると水分が失われ、パサパサになりやすい、という特徴があるからです。

そのため、加熱しすぎを避けるためには卵などの衣を使って調理するのが一般的です。衣で包んで加熱すれば表面が高温にさらされないので、ソフトに火が通りますし、衣の一部が肉から溶出する水分を吸うのでしっとり仕上がります。

肉がかたくなるのを防ぐには、たんぱく質酵素の働きを利用するのも一手。たんぱく質分解酵素を含んだ食品に肉を漬けることで、酵素の働きによってやわらかく食べられます。

たんぱく質分解酵素を含んだ食品には生姜、舞茸、キウイフルーツ、パイナップルなどがありますが、おすすめは塩こうじ。舞茸ほど匂いが強くなく、フルーツほど甘くないので、料理に使いやすいからです。

つまり、今回の場合では薄く切った鶏ムネ肉を塩こうじでマリネし、天ぷら衣で揚げた鶏天などがおすすめという結論になります。

牛肉や豚肉はどう選ぶ?

牛肉や豚肉でも、鶏肉と同じ考え方ができます。脂肪分が少ない肉は加熱時間を短くして、衣などで水分の流出を補います。しょうがの酵素を使ってやわらかくするしょうが焼きも同じ原理ですし、砂糖の保水性を活用して肉をやわらかく仕上げるすき焼きもあります。例えばすき焼きの牛肉を鶏ムネ肉に置き換える(鳥すき)など考えていけば、レパートリーは無限に広がります。

今回の回答者
料理家
樋口直哉(ひぐち・なおや)さん

科学的な視点から、素材のおいしさを最大限に生かすレシピや失敗しない調理プロセスを提案。2005年に第48回群像新人文学賞を受賞するなど、作家としても活躍している。著書に『料理1日目 たったの10皿で「料理の基本」はマスターできる』(光文書)など多数。

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