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住み慣れた生活圏で新しい「老い」を

学習会「長寿社会の街のしくみづくり~柏市の地域包括ケア」は12月8日(火)、東京・新宿区の東新宿本部で開催され、役職員など40名が参加しました。

講師には、元柏市保健福祉部長で東京大学高齢社会総合研究機構の木村清一学術支援専門職員を招き、柏市で取り組まれたプロジェクトを事例として学びながら、高齢者が安心して元気にくらせる地域づくりについて考えました。

中長期的な社会背景について木村さんは、高齢者率は都市部を中心に急増することを挙げ「団塊世代が本格的な介護を受けるようになると見込まれるのが2030年といわれます。それまでに、地域ごとの特性に即した新しい社会システムを構築しなければ、働き盛りの団塊ジュニア世代が『介護離職』せざるを得なくなります。社会的にも大きな損失です」と説きました。

柏市は2009年、豊四季台団地の建て替えを計画するUR都市機構と東京大学との3者による研究会発足をきっかけに、高齢者率が40%を超える豊四季台団地を中心とした地域をモデルに「地域包括ケアシステムづくり」と「高齢者の生きがい就労」を実現させるプロジェクトをスタートさせました。木村さんは「高齢者が徒歩で通える程度、広くても半径2キロ圏内の住み慣れた生活圏で、新しい老い方とくらし方のシステムが必要とされています」といいます。

講演した木村さん

医療・介護で、地域で「顔の見える関係」

プロジェクトは、医療、就労、住まいなどの各分野で実践内容の検討を開始しました。「地域包括ケアシステムづくり」では、地域医療拠点を設置し、地域の医師、看護師、ケアマネージャーをグループ化。それぞれが持つ住民の情報を「顔の見える関係」で共有することによって、在宅医療を推進するシステムを構築しました。

これにより開始から2年で、15人しかいなかった在宅診療を行う医師が28人に、訪問看護ステーションが12カ所から23カ所に増加するなどの成果が表れています。「医療や介護にかかわるさまざまな職種が地域医療拠点を通じて『顔の見える関係』になり、多職種の連携が実現しました。それが訪問看護や介護サービスの充実にもつながっています」と話します。

「高齢者の生きがい就労」は、歩行障害や認知症の予防になるといわれる外出機会の創出と、定年退職後の居場所づくりなどが目的です。プロジェクトでは、就労セミナーを開催し就労体験などのサポートを経て高齢者の雇用を支援しています。

職種は、保育園での読み聞かせや昼寝のサポートのほか、農業、食堂運営補助などさまざまです。「なかには週2回、1日1時間だけという就労者もいます。時間が少なければ収入も少ないですが、自宅の近くに働く仲間ができ、それが新しいコミュニティとなっています。就労を通じて社会とのつながりを感じることは、健康を維持し、地域での孤立を防ぐことにもなるのです」と語り、参加者の関心を集めていました。