2010年10月
スリランカ 森林再生プロジェクト 進捗報告(2010年6月-2010年7月)
6月までに稲の収穫が終わり、7月には高地でショウガが収穫されました。この時期、この地域は少雨による水不足に見舞われました。少雨を補うための貯水池も、高い気温と強風のために、水面から毎日大量の水が蒸発して貯水量は日に日に少なくなり、多くの農家が米の二期作を断念せざるを得ませんでした。一方、プロジェクトは順調に進捗し、カシューナッツとココヤシ栽培のトレーニングのほか、生物多様性と森林・野生生物保護に関する展覧会や、学校での絵画コンテストなどを行いました。
生物多様性と森林・野生生物保護をテーマとした展覧会 生物多様性や森林・野生生物保護に対する、地域の人々と子どもたちの意識を高め、行動変化を促すこと目的として、2010年6月4日-5日に、エタカダ小学校で生物多様性と森林・野生生物保護をテーマとした展覧会を行いました。森林局、野生生物保護局、中央環境局、メダワチチヤ地区事務所、ココヤシ栽培庁、カシューナッツ振興団、子どもクラブと学校がそれぞれ出展し、地域の教育関係者、近隣の学校に通う子どもたち、地域住民など多くの人々が訪れました。それぞれのテーマに関係する政府の各団体が一同に会して展示を行うという、遠隔地のコミュニティにとっては貴重な機会であったこともあり、来場者からは好評を博しました。

子どもクラブによる、貯水池の立体模型の展示 |

貯水池模型を熱心に眺める生徒たち。上流の貯水池から下流の貯水池へ水が移動する様子が確認できます。 |

野生生物保護局による展示。標本とともに視聴覚装置が置かれ、標本を見ている間に解説が聞けるようになっています。 |

ココヤシ栽培庁のブース。子どもたちや地域の人々に対して、有機肥料(左)や害虫であるゾウムシの対処法(右)について説明する職員たち。来場者の中には、高僧の姿も見られました。 |

中央環境局のブースでは、森林保護や炭素の固定化と隔離などについてのビデオが上映されました。 |

メダワチチヤ地区事務所のブースでは、農作業で使う伝統的な工具が展示されました。 |

森林局の展示の前で、ノートを取る生徒たち。 |

熱心に展示を見て回る地域の人々。プロジェクト実施により、多くの住民が環境問題に関心をもつようになりました。 |
森林農業活動
自然にやさしい伝統的農法による多年生作物の栽培を上流地域で促進・定着させるため、ココヤシ栽培庁、カシューナッツ振興団の協力を得て、パラナ・ハルミレワ貯水池地帯の住民に対し、カシューナッツとココヤシ栽培トレーニングを行いました。森林伐採を伴う畑作によって森林の水保全機能が失われ、下流の水量減少や土壌浸食を引き起こすことが、作物の成長不良と収入減少にもつながるのに対し、伝統的農法による多年生作物の栽培は、新たな耕作地を開拓する必要がないため違法な森林伐採を抑止し、森林の環境が保全され、下流の小規模灌漑用貯水池や分水地点の保護につながります。また、森林の林冠部分の拡大も期待できます。収穫が軌道に乗れば、世帯の可処分所得も確実に増えるため、食料不足に陥りやすい乾季に備えることもできます。次の雨季にも、ココヤシ栽培庁とカシューナッツ振興団からの支援で、ココヤシの苗木5000本、カシューの苗木8000本の配布が予定されています。
学校での絵画コンテスト
子どもたちの生物多様性と森林・野生生物保護に対する関心や、貯水池をはじめとする周辺環境に対する意識を高めるため、パラナ・ハルミレワ貯水池地帯の4校(カダワス・ランベワ、エタウェラゴレワ、エタカダ、パンディガマ)で、それぞれ“貯水池における生態系保存の重要性”をテーマに絵画コンテストを開催しました。コンテストに先立ち、生徒たちはプラン職員からオリエンテーションを受け貯水池システムの現状と重要性、森林伐採の影響、分水地点管理の重要性などについて理解を深めました。その後、各自の考えを絵画に表現する方法も学び、学校職員に代表として選ばれた合計107人の力作がコンテストに出品されました。

自作の絵を見せるエタカダ学校の生徒。1枚の絵を中央で2つの場面に区切り、左側に環境への配慮を怠った場合、右側に環境保護を行った場合の森の将来像を描きました。 |

自然の中で絵を描く子どもたち。子どもたちの作品は、学校ごとに審査が行われ優秀作品が選ばれました。 |
森林管理活動
7月末から、下草の伐採と雑草の除去を開始しました。この作業は、苗の生育状況を見極め、新たな植林の必要性があるかどうかを判断するためにとても重要です。熟練技術を必要としない作業であるため、農家である住民のほとんどがこの活動に参加しました。
子どもクラブの活動
● 小学校における新たなモデル庭園の導入準備
新たにモデル庭園の導入を希望していたパンディガマ小学校から、計画書の改訂版が提出され、プランはそれに基づき、区画の選定や土壌の整備、区画周囲の生垣などについての指導を行いました。
● 子どもクラブに対する備品の支給
子どもクラブ自身からの要請により、各子どもクラブに対してプラスティック製のテーブル1台といす25脚を支給し、ミーティングやその他の活動で利用できるようにしました。

備品を支給されたルヌペヒチチャワ子どもクラブの子どもたち |
もっと知りたいスリランカ(13)「キャンディアンダンス」
キャンディアンダンスは、スリランカ中部州キャンディを中心に行われているダンスです。もともとは、キャンディ王朝(16世紀〜19世紀初頭)の頃に宮廷内で踊られていた舞ですが、現在では結婚式など様々な機会に踊られます。特に、銀の装飾品を身につけた男性が力強く踊る様子は圧巻です。
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