「バングラデシュ 有機農業センター開設・運営プロジェクト」は、パルシステムが、特定非営利活動法人ハンガー・フリー・ワールドとともに取り組んでいます。バングラデシュ西部ジナイダ県カリガンジ郡に、13カ村1万6000人を対象とした有機農業センターを建設し、持続可能な農業を推進するプロジェクトです。
2008年度から2年間取り組まれた「バングラデシュ有機農業センター開設・運営プロジェクト」支援カンパの合計は719万6000円(2008年度実績226万5000円、2009年度実績493万1000円)となり、当初の目標としていた650万円を上回ることができました。ご協力ありがとうございました。
バングラデシュは世界3位の飢餓人口を抱える国です。住民は農薬や肥料などを購入する費用も負担できない状況にあります。ハンガー・フリー・ワールドでは、自立した生活を実現するため、持続可能な資源循環型農業に挑戦する活動を支援しています。有機農業の普及によって農業資材の購入を抑え、経済的に余裕が生まれるほか、これまで農薬を使用することによって引き起こされていた健康への被害を抑制することが期待されます。
組合員のみなさんから寄せられたカンパを活用してこのたび、建設を進めていた有機農業センターを完成させることができました。今後は有機農業の普及、土地や作物、農家の人たちを元気にすること、また生産にかかる費用削減などに取り組み、農家の生活を助けるために役立てていきます。
ハンガー・フリー・ワールドより、バングラデシュ現地の完成報告が届きましたので、報告させていただきます。
バングラデシュ 有機農業センター開設・運営プロジェクト 活動報告 2010年8月
特定非営利活動法人ハンガー・フリー・ワールドは、パルシステム様のポイントカンパによる多大なご支援を頂き、世界第3位の栄養不足人口を抱えるバングラデシュの西部、ジナイダ県カリガンジ郡で、13ヵ村1万6000名を対象とした有機農業センターを建設し、環境にやさしい持続可能な農業を推進しています。
現在の有機農業センターの様子や、課題、今後の展望について、次の通りご報告させて頂きます。
≪現在の有機農業センターの様子≫
●センターの建物
2010年1月に、研修室、宿泊施設、調理場など、建物自体の建築が完成していましたが、その後、用途に合わせて外装・内装を仕上げ、家具の配置を終えました。敷地のすぐ横を鉄道が通っているため、建築家と何度も協議を重ねて、鉄骨をしっかり入れた揺れに強い構造にしています。

完成したセンターの建物と、内装 |
●建物以外について
有機たい肥プラント、育苗所、バイオガスプラント、牛小屋、畑などの設置・整備を完了し、利用を始めています。
育苗所では、センター棟の建設と平行しながら苗を育ててきました。これまでに3万2000本を育成しています(マンゴー、パパイヤ、ジャックフルーツなどの果樹や、ニームなどの薬効のある樹)。これらの苗は、住民に提供されるほか、有機農業センターにも植えられます。たとえば、2010年4~6月には3000本のパパイヤの苗を育て、うち2500本を、センター所在地であるムンディア村の住民に無償で提供し、残り500本をセンター敷地内に植えました。また、マンゴーの苗1000本を育て始めました。

育苗所の様子 |

育苗所と畑 |
牛小屋も完成しました。2010年1月~3月の間に、10頭の牛を購入しましたが、うち6頭が子牛を産んだため、現在16頭の牛がおり、1日5~7リットルの牛乳を生産しています。牛糞は、有機たい肥プラントでたい肥にしているほか、バイオガスプラントを利用してガスを発生させ、調理室で利用しています。今後、1日約8時間分に値するガスが利用できるようになると試算しています。

牛小屋の様子 |
畑では、水はけや日当たりを考慮し、どの土地で何の作物を育てるといいか、住民と相談して決定しました。夏(3月~5月)には、ウリ、ニガウリ、カボチャ、葉物野菜など、多くの作物を収穫できました。

畑の様子 |
●有機農業訓練について
地域農家のうち、60名が有機農業の訓練を受け(2009年度中に40名、2010年7月に20名)、有機農業の実践を始めました。そのうち3名(ヘラル氏(男性)、モルジナ氏、ショノバン氏(ともに女性))は特に成功を修め、国連開発計画(UNDP)が実施した、たい肥づくり研修に講師として招かれ、他県の農家に有機農業の技術を広めるなど、他地域への波及効果も表れ始めています。
有機農業センターでは常に有機農業が実践されているため、訓練が開催されていない時であっても、センターを見学すれば有機農業の知識を得られる、と評判になり、毎日複数の訪問者が訪れています。
「以前は、有機たい肥のことを知りませんでした。化学肥料を使わないで作物を育てるなんて、絶対に無理だと信じ込んでいたのです。でも、実際に有機農業センターを訪問して、有機たい肥で作物が育てられることが分かりました。まさに、百聞は一見にしかずでした。カリガンジの農家がこうした知識を得られれば、地域の農業が変わると思います。そのためには、有機農業センターのように、実際に有機農業を学び、見学できるところが必要だと思います」(カリガンジ農家、レザウル・カリム氏)
●住民組織について
現在、29名の農家が地域の有機農業組合に参加しています。彼らは、自分たちが有機農業を実践するだけではなく、地域に有機農業を広めるため、他の農家にも有機農業の知識や成果を伝えようとしています。
≪課題≫
課題として、交通手段の問題があげられます。
- 有機農業センターに通じる唯一の道は舗装されていないため、雨が降ると泥だらけになってしまう。今年度中に、行政が道路を修繕する見込みになっている。
- 有機農業センターの近くにバス停がないため、遠方から見学に来たい、訓練に参加したい、という希望があっても、実現が難しい。
≪今後の展望≫
- 2010年度末までに、140名の農家を対象に有機農業の訓練を実施する予定です。
- 将来は、有機農業センターを、農業に関して様々な専門的情報が得られるリソースセンターとして発展させ、多くの農家や、国内の他団体にも寄与できるようにしたいと考えています。
- 将来は、土壌検査や作物の成分調査をできるような、専門的な研究センターとしても機能させたいと考えています。
- 有機農業センターや地域の農家が収穫した薬草を用いて、ハーブティや石けんなどを作れる設備を設置し、貧しい農家の収入創出につなげたいと考えています。
パルシステム様には、本センターの建設・運営にあたり、多大なるご協力を頂き、地域農家ともども心より感謝しております。今後、本センターが持続可能な農業への変革の発信地となり、バングラデシュから飢餓と貧困をなくしていくための礎となるよう、一層の努力をして参りたいと思っております。何卒、お力添え頂けますよう、お願い申し上げます。