■生物多様性や温暖化防止にも効果的な有機農業

各国の事情と課題について情報を交換 |
地球温暖化防止をめぐる関心が社会的に高まるなか、植物の成長や周辺の生態系を活用してCO2を土中に蓄積する農業が対応策の1つとして注目されています。周辺の生態系を維持するには、農薬や化学肥料に頼らず生物多様性に配慮した農法が不可欠です。
パルシステムでは、独自に定めた「産直がめざす四原則」の1つに「環境保全型・資源循環型農業をめざしていること」を明文化しており、環境保全型農業の推進に力を入れてきました。
こうした活動から、2009年度の農林水産省補助事業「農産物における省CO2効果表示ルール検討事業」にて設置された検討委員会へ委員を派遣しています。
農林水産省が3月12日(金)に開催した「環境保全型農業と地球温暖化に関する国際シンポジウム」は、パルシステムも取り組んでいる「たい肥の施用や緑肥の栽培などによる環境保全型農業は、地球温暖化による作物への悪影響を軽減するとともに農地土壌に炭素を貯留し、地球温暖化の防止にもつながる」という考えから開催されたものです。当日は、各国から5名を招き、講演とパネルディスカッションが行われました。
■日米韓などの事例を5名が紹介しました
基調講演は、地球温暖化に対応した環境保全型農業の取り組みについて、講演者それぞれの立場から事例や政策が紹介されました。
講演者とテーマは次のとおりです。(敬称略)
- 「地球温暖化に対応する土壌炭素貯留の取り組み」
ラーマ・レディ(世界銀行上級カーボンファイナンス専門家)
- 「地球温暖化に対応する有機農業の取り組み」
ティモシー・ラサール(前ロデール研究所所長)
- 「地球温暖化に対応する韓国の農業分野の取り組み」
リ・チュンウォン(韓国農林水産食品部緑色未来研究課長)
- 「地球温暖化対策に貢献するわが国の環境保全型農業の取り組み」
別所智博(農林水産省農業環境対策課長)
- 「水稲の有機農法への挑戦事例 生物多様性と地球温暖化」
佐々木陽悦(全国エコファーマーネットワーク化推進準備委員会会長)
講演では、農薬や肥料といった農業資材が充分手に入らない地域での不耕起栽培や、有機栽培による水資源確保、韓国における「緑色成長戦略」、日本のエコファーマー制度や有機農業モデルタウン事業などについて報告がありました。
■課題について問題を共有したパネルディスカッション
その後のパネルディスカッションでは、講演した5名に加えて主婦で環境カウンセラーの岡本明子氏をパネラーに迎え、各地での取り組みや消費者の反応、今後の課題などの情報が共有されました。米国や韓国も日本と同様に有機農産物の需要が高まっているものの、シェアはまだ低いとのことです。
また、いずれの国も健康上の理由で有機農産物を購入している傾向が強く、有機農業によって生物多様性が維持されていることや、炭素を土中に貯留できることといった環境的側面での機能について認知が低いことが課題として共有されました。
講演者のラサール氏からは「生物多様性や地球温暖化防止といった機能を知ってもらうには、生産者や消費者になんらかのメリットがあることが必要です。地球環境問題については、むしろ若者の意識が高く、これからも啓発していくことが重要ではないでしょうか」との提起がなされました。
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