■海の環境保全や安全追求などを定めた水産方針

しらすを手に記念撮影する森水産の森社長(右)とパルシステム連合会原常務 |
水産業をめぐる環境は、世界的な需要の増加で日本が外国に“買い負け”しつつある状況にあります。一方、国内では漁業者の減少や日本人の魚食離れなどにより、漁獲量は低下の一途をたどっています。
また日本の周辺水域では環境の変化やそれにともなう水産資源の減少も進んでおり、水産業を持続可能とする水産資源を保全する取り組みが不可欠となっています。食料自給の観点からも、日本人が昔から親しんでいた魚食文化を守ることで自給率向上につながります。
パルシステムは2009年1月に「水産方針」ならびに「水産物管理基準」を制定しました。水産方針は(1)海の環境を保全し、水産資源を持続的に利用する取り組みを行います(2)日本の水産業再生に取り組みます(3)水産物の安全を追求します(4)日本の魚食文化を大切にします――の4つの柱としました。水産物の産直を通じ、海の環境保全や水産物の持続的な利用を実現する事業や運動に取り組んでいきます。
今回の(株)森水産および(有)カネモとの産直提携は、水産方針が制定されてから初めての水産品における提携となります。
■お互いの現状と課題について確認しました

産直会議では互いの現状と課題を確認 |
産直提携を結ぶために開催した産直会議は7月3日(金)、愛媛県松山市のカネモ本社で行われ、10名が参加しました。森水産は「漁師がつくった釜揚げしらす」をはじめとするしらす漁と原料の加工、カネモは選別や包装といった加工と卸売を事業とする会社です。
森水産、カネモ両社の社長を務める森敬一氏は「この地で3代にわたって漁業に携わってきました。地元では『人は人なか、田は田なか』という言葉があります。これからはいっそう地域の人の力を集めて、組合員の期待にこたえたいと思います」とあいさつ。続いてパルシステム連合会の原秀一常務が「日本の水産業はたいへん厳しい状況です。制定した水産方針に賛同してもらえるみなさんと提携することで、水産業を盛り立てるお手伝いができれば幸いです」と話しました。
会議は、森水産とカネモ、パルシステムそれぞれの紹介と、お互いの現状と課題について確認しました。漁を行う森水産では、網の目が縮まらないナイロン製の網を使用することで小さなしらすを逃がしたり、漁場に浮遊している空き缶などのゴミを自発的に回収するなど、資源を守る取り組みを続けているとのことでした。
■漁獲後最短15分で釜揚げしらすに加工

水揚げされていくしらす |
会議後は、森水産へ移動し船に同乗してしらす漁を見学しました。漁場は、近ければ港から5分とかからない場所にあり、2隻の船で網を引く「パッチ網」と呼ばれる方法で漁獲します。また、森水産では港に面してしらすをボイル、冷却する加工場を建設し、ポンプで水揚げされたしらすは時間をかけずに釜揚げしらすへと加工されます。漁獲から最短15分で釜揚げ加工することができるとのことでした。
翌4日は、選別や袋詰めなどの加工を行うカネモの工場を見学しました。しらす以外の生物や石といった異物を取り除く選別作業は、作業員が2kgずつ目で確認するほか、金属探知機やエックス線装置を活用していました。最近は時間が経って細切れになった釣り糸混入が増えており、人の目でなければ見つけることができないそうです。原料のサンプルは生産ロットごとに冷凍保存され、少なくても賞味期限の倍の期間は確認できるとのことでした。
森水産とカネモ、パルシステムでは今後、組合員の産地見学などを実施し、産直交流を進めていきます。また、このほかの産地でも水産業の産地提携を増やしていく予定です。

港に面して建設された森水産の工場 |

船に乗って漁を見学 |

とれたしらすについて説明を聞きました |

工場ではボイル後風で乾燥 |

ロットごとにサンプルを保存 |

カネモでは1箱ずつ異物を確認します |
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