■「生物多様性を豊かにする“生きもの調査”の原点に帰る」
パルシステム連合会とJA全農、栽培技術・調査指導研究団体、調査・広報グループ等で構成する「田んぼの生きもの調査プロジェクト」(※)は、2月2日(土)、東京大手町JAホール(千代田区大手町)にて、第4回「田んぼの生きもの調査 全国シンポジウム」を開催しました。生協組合員、一般の方、農業関係者など約300人が参加しました。
開会のあいさつで、パルシステム連合会の若森資朗理事長は「パルシステムの基本理念は、“心豊かなくらしと共生の社会を創る”ですが、この共生は “自然との共生”という意味でもあります。農薬を使わない田んぼは、多くの生きものがいて、美味しいお米のできる食育の現場でもあります。田んぼの生きもの調査は自然と共生する大切さを、大人も子どもも実感できる貴重な機会です」と述べました。

農民作家の山下惣一氏の講演
続いて、農民作家の山下惣一氏が、「農と食の未来をみつめて」と題する講演を行いました。
「農業という文字は『農』と『業』に分けられます。この『農』には生きもの、草花、風景などの環境を作り守る役割があります」と生態系や環境を守り人や文化を育む農業本来の価値について語りました。
「日本に農業は絶対に必要。それを理論付けする手段として『生きもの調査』は非常に有効です」との熱い語り口調に参加者は熱心に聞き入っていました。
■2007年度の活動報告と「生きもの指標」

会場の様子(東京大手町JAホール)
午後からは、「田んぼの生きもの調査プロジェクト」の2007年度の活動報告が行われました。
冒頭、岩渕成紀氏(田んぼの生きもの調査プロジェクト幹事、NPO法人田んぼ理事長)より、プロジェクトのメンバーが議論を重ね作成した「生きもの指標」(243種に及ぶ田んぼの生きものの産卵時期や生息場所、また、農法によっての増減などを表にまとめたもの)が発表されました。「足元に広がっている豊かな生きものの世界を、『生きもの指標』を通じて伝えていきたい」とのお話でした。
さらに同プロジェクトのメンバーから、「活動産地からの報告」「生きもの調査と市民連携」「生きもの調査から見た政策提言」など多様な側面からの活動報告がありました。
最後に、パルシステム連合会の田崎愛知朗氏(田んぼの生きもの調査プロジェクト事務局長)より、生物多様性農法のプラットフォーム機能を担う「NPO法人 生物多様性農業支援センター」設立に向けての活動報告がありました。
司会を務めた宇根豊氏(田んぼの生きもの調査プロジェクト幹事、NPO法人農と自然の研究所代表)からは「暮らしと仕事の中に生きものへの眼差しを取り戻すことが大切です。この『生きもの調査』は世界で初めての歴史的な取り組みになると考えます」とのコメントがありました。
会場は、参加者どうしの交流もあり、多数の講演で活気にあふれていました。また、生きもの調査の新たな段階と、その具体的な取り組みも提示された充実したシンポジウムとなりました。
【資料】
パルシステムの産直産地や地域団体、生協組合員と協力して2004年より開始した「田んぼの生きもの調査」は、2005年度プロジェクトを結成し、生物多様性を活用した環境創造型農業を全国に広める活動を行っています。
(※)「田んぼの生きもの調査プロジェクト」プロジェクトメンバー
パルシステム連合会、JA全農(SR推進事務局)、生活クラブ事業連合、(社)農村環境整備センター、NPO法人田んぼ、NPO法人民間稲作研究所、NPO法人農と自然の研究所、(株)アレフ、(株)ゼネラル・プレス
<参考>
社会的責任と生協事業 第33回 田んぼの生きもの調査
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