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掲載日:2007年10月5日

日豪EPA交渉に対するパルシステムの見解について
現在、日本とオーストラリアの間で交渉が行われているEPA(経済連携協定)に対するパルシステムの見解をまとめました。

 現在、日本とオーストラリアの間では、EPA(経済連携協定)の締結に向けた交渉が行われています。パルシステムは、日本の食料自給率を引き下げ、地域農業(社会)を崩壊させることに繋がりかねない「重要農産物の関税撤廃」には反対の姿勢をとり、今後の交渉において農産分野での重要品目を関税撤廃の対象から除外するなどの対応を政府に求めていきたいと考えています。

 また、組合員のみなさまには、北海道庁からの要請もあり、北海道庁が作成したリーフレット「日本の『食』が危ない!」を組合員の皆様にお配りしています(10月8日〜12日)。日豪EPA交渉について分かりやすくまとめられていますので、ぜひご一読くださいますようお願いします。


日豪EPA(※1)交渉に対する見解



パルシステム生活協同組合連合会


1.日豪EPA交渉をめぐる状況

 現在、日本政府はオーストラリアとのEPA交渉を行っています。日豪貿易(※2) は、日本への輸入が日本からの輸出の2倍弱に達する圧倒的な輸入超過の状況です。主要輸入品目は石炭・液化天然ガス等(50.9%)、鉄鉱(17.2%)等の鉱工業原料と農林水産物(約22%)が中心で、しかも農林水産物の多くは、牛肉、乳製品、小麦、大麦、砂糖、コメであり、いずれも日本の関税撤廃が困難な重要品目です。 オーストラリアは農業大国であり、かつその主要輸出農産物が我が国の農業にとっての重要品目と一致しているため、EPA締結によってオーストラリア産農産物の関税が撤廃された場合には、我が国の農林水産業や地域経済に大きなダメージを与える恐れがあります。

 農水省は、関税が撤廃されると国内の農業生産が7900億円減少し、牛肉と乳製品の生産額は半減、小麦と砂糖はほぼ壊滅するという試算を発表しました。また、北海道庁の試算では、農業の崩壊によって、関連製造業や地域経済の崩壊が同時に起こり、1兆3千億円以上の影響を受けると試算しています。このように、壊滅的な打撃を受ける北海道(北海道経済連合会を含むほぼ全ての主要団体)や農水省、全中などは、オーストラリア産農産物の関税撤廃に反対しており、重要品目が除外されない限り日豪EPAの締結には慎重な姿勢をとるとしています。北海道の位置は日本の農業を支える食の拠点として欠かすことの出来ない存在であること、府県の酪農はじめ多くの加工食品が北海道の農産物によって支えられていること、北海道のみならず農の崩壊は食関連産業のほか運輸、通信などに様々な影響を与えるものとして無視し得ないものです。

 一方、早期締結を推進する日本経済団体連合会、日本商工会議所、日本貿易会は、推進の論拠として、「資源・エネルギー、食料の安定供給確保」と、「第三国に比べて不利でない条件の確保」の2つを掲げています。 1つ目は、天然資源や農産物は日本では手に入らないため、「輸出制限の禁止」等を含むEPA協定の締結で安定供給をしてもらうということです。この背景として、中国・インドの人口増加と所得水準の向上などにより、アジア・アフリカでは穀物生産量が需要量の増加に追いつかず、不足分を北米等からの輸入によって賄っている状況があります。

 2つ目は、オーストラリアは、2005年1月に米国との自由貿易協定(FTA)を発効させており、豪州でビジネスを行う日本企業は関税や投資条件の面で米国企業よりも不利な条件に置かれているというものです。 日豪政府の共同研究報告書によれば、日本が小麦・牛肉など重要品目の関税撤廃の例外化を主張できると盛り込まれていますが、オーストラリアはこれまで他国とのFTA締結において、関税撤廃の例外化を認めたのは、米国の砂糖のみです。交渉過程で関税撤廃の例外化が実現できるかは不確実な部分が多いといえます。


2.パルシステムの見解

 パルシステムは「食料・農業政策」の中で、食料の自給や輸入について以下のように方針化しています。


2.主な目標
2−1.食料の自給と安定をめざします。
(1) 食料の自給率向上を進め、国内の食料資源調達に率先して責任を果たします。
現状は、私たちの食べるものをすべて国内産農産物で自給するのは不可能ですが、減反田・耕作放棄地の活用、飼料自給率向上、農地集約と大規模な土地改良等によって生産性を向上させるなど、生産者と協同し、食料自給を高める政策を推進します。

(2) 土づくり・地域再生の視点に立ち、自給作物の拡大を進めます。
WTO体制の食料輸出国が中心の貿易システムこそ食料安全保障を達成する重要な手段との考えがあります。私たちは、飢餓・栄養不足を解決する基本は「自給」であり、地域をベースとする食料システムを構築することが重要だと考えます。生産と消費が一体となった地域社会の存続と生態系との共生を目標に、地域資源循環型農業に取り組みます。

(3) 私たち自身のくらしのあり方を見直します。
日本では飽食のもとで食べ物の3割が使い捨てられている現実がある上に、輸入食品への傾斜が目立ちます。私たち自身が暮らしの中での無駄をなくす努力を行なうと共に、国産食品中心の食生活を選ぶ運動を進めます。

 ここで、明確に述べられているように、食料自給を高め、無駄をなくす生活が、世界の飢餓や栄養不足を解決する道であり、生産者と消費者の新たなパートナーシップを確立して、21世紀の食料・農業問題解決に取り組んでいくことが、パルシステムの重要な政策となっています。

 オーストラリアは世界有数の農業輸出国であり、日本にとってはすでに第3番目の農畜産物輸入国となっています。また、我が国と比較すると、農用地面積は89倍、農家一戸あたりの平均経営面積は1,881倍であり、非常に強い競争力を持っています。日本はこれまでに、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、フィリピン、タイ、ブルネイ、インドネシアの8カ国とEPAを締結していますが、オーストラリアとのEPA締結は、これまでの他国との締結とは異なり、国内農畜産業に非常に大きな影響を及ぼすことが明らかです。また、オーストラリアからの農畜産物の関税撤廃が認められれば、アメリカやカナダからも関税撤廃の要請圧力が強まる可能性があります。

 FTA、EPA交渉の過程で、「日本農業は補助金漬けで過保護だ」と言う議論が横行していますが、これについても的確に反論しなければなりません。日本の国内保護総額は6400億円で農業生産額費7%、アメリカが1.8兆円で7%となっていますが、しかし「隠れた輸出補助金」を加えると3兆円を超えます。EUは4兆円で12パーセントです。オーストラリアは、例えば、輸出を促進するために、穀物や乳製品のような輸出市場間の「価格差別」による「隠れた輸出補助金」を出しています。

 パルシステムは、FTA・EPAの推進を否定するものではありませんが、オーストラリアとのEPA締結は、現状でもほとんどの鉱物資源の関税はゼロになっており、また工業製品の関税も低率であるため、早急な締結の必要性は薄いと考えます。オーストラリアとの連携は、それぞれの自然と環境保全型の農業を守り育成する立場で行うべきです。現在、オーストラリアでもアメリカの遺伝子組み換え種子の輸入と栽培をめぐって世論が割れています。農業を単なる産業として大量生産・輸出に偏ることは、この間の天候異変による旱魃被害などに見られるように持続可能性を損ない不安定な生産に襲われることとなっています。農林水産省の試算では、農産物の関税を全廃すると日本の食料自給率は12パーセントまで下がってしまいます。また、これ以上の日本農業の衰退は、国土の荒廃と窒素過剰等によって、環境汚染と健康被害を促進する結果をもたらします。従って、世界貿易においても、生命を第一に考え、環境保全と環境保全型農業の育成、農と地域社会の保持発展、各国自給力の育成発展と共存すべきと考えます。

 パルシステムは、このような状況の中での日豪EPA交渉に対し、日本の食料自給率を引下げ、地域農業(社会)を崩壊させることに繋がりかねない「重要農産物の関税撤廃」には反対の姿勢をとり、今後の交渉において農産分野での重要品目を関税撤廃の対象から除外するなどの対応を政府に求めていきます。


以上


【資料】

※1
経済連携協定(EPA: Economic Partnership Agreement)とは、2以上の国(又は地域)の間で、自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の要素(物品及びサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野、例えば人の移動や投資、政府調達、二国間協力等を含めて締結される包括的な協定をいいます。(財務省のホームページより)

※2

日豪貿易の概要(2005(平成17)年)

〔日本への輸入〕 総額:2兆7062億円

(主要輸入品目)石炭・液化天然ガス等(50.9%)、鉄鉱(17.2%)、肉類〔特に牛肉〕(9.1%)、アルミニウム(4.4%)、木材チップ等(3.1%)、金塊(1.9%)、穀物(1.9%)、種・飼料植物(1.4%)、チーズ等酪農品(1.0%)、その他(9.1%)

〔日本からの輸出〕 総額:1兆3705億円

(主要輸出品目)自動車・同部品(53.9%)、機械類(16%)、電気機器(8.5%)、タイヤ等(2.9%)、鉄鋼(2.7%)、製油(2.5%)、光学機器・精密機器(2.0%)、その他(11.7%)




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