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産直産地はいま


最終回 米沢郷牧場グループ(伊藤幸蔵さん、充孝さん)
山形県の東南部、宮城県、福島県に接し、上杉氏の城下町米沢市に隣接する高畠町。ここにブドウ、サクランボや鶏肉、肉牛等を生協向けに生産する農事組合法人 米沢郷牧場があります。古くから安全な農畜産物の生産に取り組む一方、JAS有機認証やISO14001の取得、ICタグを使ったトレーサビリティシステムなど、新たな取り組みにチャレンジする米沢郷牧場グループの(有)「ファーマーズクラブ赤とんぼ」代表・伊藤幸蔵さんと、米沢郷牧場事業部の伊藤充孝さんを訪ねました。

ルポライター:コープニュース 上林裕子さん

〜『OPENまいんど』2004年3月号より〜
左・伊藤充孝さん(29歳)、右・伊藤幸蔵さん(36歳)

――多くの人たちが関わる農業をめざして
東に奥羽山脈、南は吾妻連峰、西に飯豊連峰と2000メートル級の山々に囲まれた盆地状の置賜地方は、古くから松川沿いに米の収穫地でもありました。地域ぐるみで自然循環農業に取り組む「ファーマーズクラブ赤とんぼ」は、1995年8月に農家10名が出資して設立され、現在、会員は76名を数えます。

「大学を卒業し地元に帰ってみると、若手の発言の場がない。米沢郷を作ってきた親の世代には青年団などの組織がありましたが、それもない。それで、若手が主体的に活動する場を作ろうと。しかし、若手だけでは地域は成り立ちませんから、高齢者にも参加してもらいながらやっています」。代表の伊藤幸蔵さんは、赤とんぼの現在の取り組みを語ります。


――自分の米を自分で食べられない農業への疑問
米は人、品種別に保管。
現在、赤とんぼでは五つのことに取り組んでいます。一つは「機械の共同利用」。利用の時期が重なるため、共同利用は難しいと言われますが、1月に共同利用の面積を全部出し、みんなで話し合いながら5月末からの田植機の利用日程を決めています。それに向けて種まき、種の準備などを始めます。田植機も4人一組でやってもらう。そうすれば人手も助かるし、効率的に機械が動く。ただの機械利用と違う一種の「結い」の形でやっています。共同利用はコストダウンと取られがちですが、それよりも農家の手取りを増やすことを目指しており、むしろ「コストダウンは嫌い」と幸蔵さんは話します。

一番利用が多いのがコンバインと収穫乾燥機。赤とんぼでは米を、「人」「品種」「栽培方法」「ほ場」別に全部分別しています。農協ではカントリーエレベーターやライスセンターで効率的に大量一括処理を行っており、農家は自分の作った米を食べられない。「『自分の作った米を自分で食べたい』ということも赤とんぼをやっていく理由の一つ」と語ります。それは、作った米への自信と責任を示すことでもあり、それをどう伝えていくか、これから農業を続けていくためにも個人の責任とみんなの責任をはっきりしていくことが必要だと語ります。最近では自分たちの食べものも共同購入していると話してくれました。


――持続可能な農業に向けた“地元”へのこだわり
栽培データをほ場別にグラフ化。
二つ目が農業資材などの「共同購入」。ISOを取得した2000年から共同購入をすすめてきました。赤とんぼの肥料は全部内容成分別に原材料を指定して作ってもらい、土壌検査をした上で適量・適期に施しています。こうした取り組みを通じ、「有機農業」に取り組める状況を作っていこうとしています。

三つ目が「精米」。赤とんぼは自分の産地での自家精米にこだわった生産を行っています。「どの卸も精米所も精米代金を取っており、それを産地に置けば産地に雇用が生まれる」と幸蔵さんは話します。また、精米時は、一割が米ぬかとして出ます。米沢郷では牛の餌に大量の米ぬかを使っています。米ぬかは酸化しやすく、東京では“ゴミ”ですが、地元では宝。あくまでも“地元”にこだわっていきたいとその思いを語ります。

四つ目として、赤とんぼでは生産したものを「共同販売」という形をとっています。生産から販売まで、すべてに農家が関わり責任をもつという考え方です。参加する生産者は「赤とんぼ」の自主栽培基準を守り、ISOにも全メンバーが参加するという条件があります。それを納得した上でみんなで販売していくことを進めています。

五つ目が「農法の研究と開発」。技術はすごく重要で、技術がなくて「農薬を減らそう」というのは無理だと話します。各グループごとに土壌を調べ、その結果を見ながら収量や食味の違いを比較し、追肥や土質を検討し、対策を講じています。「売ることは大切ですが、それと同じくらい技術がないと絵に描いた餅。農家が一番力を注がなければならないのは技術」と幸蔵さんは話します。


――技術にこだわりをもった人たちの集団としての「米沢郷牧場」
「技術がなければ農家じゃない」と語るのは、農事組合法人 米沢郷牧場で肉牛の生産に携わる弟の充孝さん。米沢郷牧場には“変人”が多いと若者らしい屈託のない笑顔で語ります。それぞれが技術にこだわりをもちながら、まんべんなく同じことを目指している素晴らしい地域と、高畠の土地や人たちへの思いを語ります。

充孝さんは、農業に就いて5年目、牛の飼育と販売・飼育管理のほか、現在は小松菜を原料にした青汁の製造を担当しています。「私は次男坊なので農業をしなくてもよかったのですが、高校生の時に父(注:米沢郷牧場代表の幸吉さん)がカナダに牛を買うのについて行って。高校卒業後、一年間、カナダでファームステイしたのですが、そこでは日本などへ向けた小麦を作っていて、そのポストハーベスト作業をやりました。牛の皮膚病に10〜20倍に薄めて使うのとほぼ同じ農薬を原液で小麦にかける。その作業をするうち具合が悪くなってしまいました」と当時を振り返ります。日本に帰り、昔から農薬をあまり使わない農業に取り組んでいる米沢郷牧場について、「やっぱりこういうのがいい。米沢郷が取り組んでいたBM技術を勉強したいと思ったのが動機でした」と話してくれました。


――「生産産業」へ、人たちとのつながりのなかで持続可能な農業をめざす
『米沢郷まるごと小松菜』の工場にて。充填機の清掃中。
グローバル化の中で、農業に対して悲観的な考えや価格の問題があるなか、幸蔵さんに今後の農業について語ってもらいました。

「農業は重苦しい閉塞感に包まれていますが、それを打ち破るのは後継者が育つことです。親が子どもに農業をしてほしい、子どもも『百姓をしてもいいな』と思える状況、農業が職業として成り立っていくことが大事です。そのためには法人化や消費者とのつながり、交流が必要。それができれば農業は捨てたものじゃない」。最後に生協に望むこととして、弟の充孝さんは、『米沢郷のまるごと小松菜』について、「有機認証を受けた畑で作ったものを有機認証の加工場で冷凍加工したものです。産地では、もっと良い物を消費者に届けたいと思って作っていますが、それを消費者に伝えられる機会を作ってほしい」と語ります。

傍らで兄の幸蔵さんが結びます。「生産者が首都圏コープとつきあって良かった、という実感が大事です。よく“農業の後継者”ということが言われるのですが、消費者の方も後継者が育っているのか、問いかけたい。だって生産と消費は車の両輪なのですから」。


  雪に埋もれた畑。周りを山に囲まれた置賜盆地は、米作りには最適の土地。
■メモ
◎農事組合法人 米沢郷牧場
1978年設立。1975年より生協との肉牛の取引が始まった。果実、鶏肉、農産物加工品等を生産。「自然循環農業」を目標に有機農業を進めている。伊藤幸吉代表理事。
【本部所在地】
山形県東置賜郡高畠町大字一本柳2713
米沢郷牧場のホームページへ

◎有限会社ファーマーズクラブ赤とんぼ
1995年設立。2000年に農業生産者グループで全国初のISO14001を取得。同年にJAS法による有機農産物の生産農場認定も取得。会員は稲作を中心に野菜、果実、畜産などを複合経営している人が多い。2004年1月現在、ISO14001での生産工程管理ほ場は247ヘクタール、有機認証ほ場106ヘクタール。
【本部所在地】
山形県東置賜郡川西町大字洲ノ島5760
ファーマーズクラブ赤とんぼのホームページへ
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