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産直産地はいま


第8回 ポークランド(豊下勝彦さん)
十和田湖にほど近い秋田県小坂町にあるポークランドは豚肉産直を行っている3産地のひとつ。秋田・青森・岩手の県境に位置する小坂町は戦前から銀や銅の鉱山として有名でしたが、戦後は企業養豚も盛んでした。JAかづのが72ヘクタールの高原の一角に、7ヘクタールのSPF豚(特定の病原菌のない豚)の農場を設立したのが1995年。97年にはさらに10ヘクタールの農場をひらき、現在、年間7万5千頭を生産しています。当初からBMW(バクテリア・ミネラル・ウォーター)技術を導入して環境保全型農業をめざすとともに、堆肥を地域の野菜農家などに還元する地域循環型農業を実践しています。

ルポライター:コープニュース編集長・斉藤一志さん

〜『OPENまいんど』2003年12月号より〜
豊下勝彦さん(42歳)

山間の道を車で登り視界が開けると、山のふもとに高原が広がり、紅葉が始まった雄大な景色の中に事務所や豚舎、処理施設が整然と並ぶ姿が目に映ります。車から降りても、糞尿のいやな臭いが感じられない産直豚肉の生産現場です。標高約360メートル、11月中旬には雪が降り、積雪量2メートル、冬の寒い日はマイナス20度にもなる地域です。


――ポークランドが設立された背景は?
ポークランドの子豚たち
小坂町にポークランドが設立されたのは1995年。企業養豚家のミートランド建設の要望と全農が計画するSPF豚100万頭構想がきっかけでした。

鹿角市と小坂町にまたがるJAかづののエリア内は、30年ほど前から企業養豚(約5万頭)が導入され、畜産が盛んな地域です。この企業養豚家から地元に大きな解体処理場の建設の要望があり、同じ頃進められていた秋田県北地方の解体処理場の見直しと重なって、1990年頃、全農も支援して、処理能力14万4千頭の大規模な食肉流通センターを設置しようという計画に至りました。

しかし、処理能力に対して企業養豚家の出荷だけでは大幅に不足するため、全農のSPF豚100万頭構想の一環として農協が7万頭規模の農場を建設しようと、1992年頃から準備が始まり、第一農場、第二農場に分けて建設が進みました。豊下代表は当時の農協畜産課長として建設に奔走しました。


――最大の課題・糞尿処理――BMWの技術でクリア
BMW技術による汚水処理場の内部
農場建設にあたっては、「最大の課題が糞尿処理で、養豚公害をいかに出さないようにするかということでした」(豊下代表)。

地元の企業養豚の“公害”が問題になっていたことから、糞尿処理の方法の探求が始まり、九州など各地を視察し行きついたのがBMW技術による処理でした。実践している農家を訪ねてみて、「畜舎はきれいではなかったけれど、臭いがない、ハエがいないのにまず驚きました。他の処理方法と別格だなと」と、豊下さんはいいます。

ポークランドの処理方法は、排水プラントと活性水プラントを結合させた自然浄化法(内水理論)。「排水のシステムで処理した途中のものを活性水処理プラントに引き入れて処理しているのが特徴となっています」(豊下さん)。現在、1日380トンの尿など排水が処理されています。BMシステムにより処理された水は茶色ですが、同農場では最後にオゾンによる脱色装置にかけて無色透明にし「水質基準の10分の1以下」になっています。処理水は豚舎や事務所の洗い水としてリサイクルされ、余った分は排水されています。

糞は別に集められて堆肥舎で堆肥加工し、野菜農家などに供給されています。堆肥舎はさすがにきついアンモニア臭がありましたが、大規模なBMWの処理施設は、想像以上に臭いはありません。地域からのクレームは年々減り続け、今年は「クレームゼロ」といいます。


――お風呂に入ってから豚舎を見学
農場へ入る車はすべて、消毒槽を通る
豚舎を見学しました。SPF養豚だけに、車は消毒用のゲートで消毒液を浴び、消毒槽を通過して農場に入ります。豚舎内部へは風呂に入ってからだを清潔にし、下着からすべて備え付けのものを着用、カメラや筆記用具は別に消毒をしてもらいました。外から菌を持ち込まないよう万全の体制が取られます。これは職員も同様で、毎朝出勤すると同じ要領で豚舎に入り、出るときも風呂に入ってから出ることになります。

豚舎は、交配確認豚舎、妊娠豚舎、分娩豚舎、肥育豚舎に分かれています。品種は3元交配のLWDで、母豚は1500頭、雄豚(デュロック)は約55頭います。生産の流れは、種付け後114日で出産となりますが、出産の一週間前に分娩舎に移動します。出産後、3週間で親から離し、雄・雌に分けて40日間育成し、全部で150日間育てて出荷となります。枝肉換算で70キロほどでの出荷です。

肥育豚舎は“オールインオールアウト”といって、ひとつの部屋の豚を全部出して洗浄・掃除をして次の群に入れ替える方式。また、各部屋の気温は自動制御となっており、同じ気温でも豚の状態を観察しながら職員がドアの開け閉めを行い、微妙な温湿度調整を行っていました。管理は常時わずか4人で行っているそうです。こうした衛生的できめ細かい管理により、安定した肉質と量の豚肉が生産されています。

神田新奈さん。女性らしく管理もきめ細やか
案内してくれた分娩部長の神田新奈(にいな)さんは酪農学園大学を卒業後、ここで働いています。「動物が好きだったので、別に仕事が辛いと思うこともありませんし、生き物が相手なので毎日が同じようでいて新しいですね」。現在、豊下代表も含めふたつの農場で働いている人は65人、平均年齢は27歳と若く、すべて地元雇用です。


――産直豚肉の産地表示改善を
農協を通じての系統出荷の場合、生産者は農協を通じてと場に出荷して終わり、あとは全農が販売等を行うというのが通常です。しかし、豊下さんは生産者として「組合員に届くところまで追いかけてみて、クレームも含め消費者にどう評価されているのか見極めていきたい」といい、実際、それを実行しています。

産直豚肉に対する今の不満は、各産地が生協の製品の段階で混ざってしまい、SPFであること、BMW技術を導入した環境保全型の養豚を行っていることなどの情報が組合員に届かないこと。産地表示も含め、表示を改善できないかというのが生協に対する要望です。中長期的には飼養方法の特徴も含めた産地表示をどう実現していくかは、今後、生協が取り組まねばならない課題で、そのための生協側のシステム整備などが求められます。

豊下さんは、首都圏コープとの提携で、消費者の要望や社会の要望を勉強する機会に恵まれたことを高く評価します。「勉強したことを活動の出発点にしています。例えば最近ISO14001の認証を取得しましたが、これも生消協などで話を聞いて必要と感じて取り組んだものです」。


――堆肥を生かし、野菜生産も手がけたい
醗酵堆肥舎。1日約80トンも出る糞はここで堆肥にされ、地域の野菜農家へ
ポークランドの将来について豊下さんは、「今の敷地内に母豚1500頭の農場をもうひとつ作ること」をまずあげます。

エリア内には肉牛肥育農家の草地が500ヘクタールあります。しかし、牛を飼うのをやめる人が続いていることから、これらの遊休予備地と豊富に作られる堆肥を生かして、ポークランドとして地域のシルバー人材を活用しながら機械化した野菜栽培も手がけ、いわば企業内循環型の農業もやってみたいという構想も持っています。積雪のある冬場の仕事をどうするかなど、超えなければならない問題はありますが、実現すれば循環型農業に新しい歴史を開くことになります。環境保全・地域循環型を目指して作られたポークランドは、地域の活性化にとってもその延長線上に新しいさまざまな可能性を秘めているといえます。


BMW技術による汚水処理場の全景
■ポークランドメモ 
JAかづのを中心に、平成7年2月10日に設立された有限会社ポークランド(秋田県小坂町小坂字台作1-2)と、9年6月16日設立の有限会社十和田湖高原ファーム(同・1-1)の2社に分かれて、特定の病原菌がないSPF豚を生産する。敷地面積は合計約17ヘクタール、年間の肉豚生産は約7万5千頭。当初からBMW(バクテリア・ミネラル・ウォーター)の仕組みを導入して環境対策を行うとともに、生産された堆肥を地域の耕種農家に還元して地域循環型農業を実践している。役職員数は、シルバーパート3人を含め65人で平均年齢は27歳。
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