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産直産地はいま


第6回 大紀コープファーム(山本章彦さん、王隠堂正悟哉さん)
柿や野菜、梅の産地としておなじみの大紀コープファーム。その代表である王隠堂誠海(おういんどう・まさみ)さんと息子の正悟哉(まさや)さん、有機栽培に取り組む山本章彦(やまもと・あきひこ)さんらにお話を伺いました。

ルポライター:コープニュース 上林裕子さん

〜『OPENまいんど』2003年10月号より〜

左・山本章彦さん(39歳)、右・王隠堂正悟哉さん(25歳)

梅や柿、野菜などの生産・加工産地である大紀(だいき)コープファーム(奈良県五條市、代表・王隠堂誠海さん)。その大紀コープファームが新たな試みとして和歌山県との県境に近い三重県御浜(みはま)町に共同農場(有)御浜天地を作ったのは5年前。20年の産直活動のひとつの到達点として「共同農場」が作られたわけですが、同時にそれは、地域を基盤とした「有機の郷」という循環型社会をつくり、次の世代に手渡していこうという試みでもあります。本格的な収穫まであと3年はかかるという御浜天地では、山本章彦さんを中心に、有機栽培のための草生栽培実験や農薬を使わないための工夫をしています。また、今年2月には和歌山県桃山町に、カット野菜工場(株)オルトを稼働させました。ここは、王隠堂正悟哉さんが事業本部長として指揮をとっています。


――13年目に組織解散、再編
最初の王隠堂農園の前で研修生と王隠堂誠海氏
王隠堂誠海さんが農業を始めたのは農薬多用の慣行農法が一般的だった1972年。74年には有吉佐和子さんが朝日新聞に「複合汚染」を連載、農薬被害が大きな波紋を引き起こしました。

こうした状況の中で王隠堂さんは「農薬を使わない農業」を目指します。初めはひとりでしたが、徐々に仲間が増え、82年頃グループ化します。

「自分がグループの代表を務めることになったが、『共同と分化をくりかえす』のが集団の常だから、10年経ったら解散しよう、と決めて代表になった」(王隠堂さん)。10年の間に共同の建物や選果機などが増え、専従ができ組織の形になっていった。そして10年目、「解散するか否か、それぞれ自由に考えようと。結局13年目に解散式をやり、改めて一年かけて新しい組織・体制を作った」「事業部門として(株)パンドラファームを設立、それぞれの組織がセンターの元に集まる体制にした」というのです。

充分うまく動いている組織をあえて解散させることで、「共同」の意味をそれぞれ問い直すことが、次のステップのために必要だったのか……。その再編の中から共同農場(有)御浜天地が生まれてくるのです。


――地域共同センター(株)パンドラファーム
無農薬のシソをもみシソに加工する
事業部門として独立した(株)パンドラファーム(奈良県五條市、和田宗隆社長)では年間柿が2000トン、梅は1000トンを扱います。梅の多くは梅干しなどに加工されます。梅の加工場では20トンタンク、10トンタンクがずらりと並び、ここで第一次加工の塩漬けをします。約一カ月で塩漬けした梅を取り出し、土用干しするのですが、これが大変。塩漬けした梅は大変デリケートで、機械やバキュームのようなものでは皮が破れてしまうため、専用の台に人が乗りタンクの上につり下げ、人力で取り出すのだそうです。

ここで扱う有機の梅は約150トン。有機の場合斑点があるなど製品率が悪く、梅干しにするのは約60トン、そのほかは青果や、エキス用として使われます。

梅干しに欠かせないシソは一般にはほとんどが輸入もの。パンドラファームの梅農家はシソも作っていたのですが、味もまちまちなので生産方法を統一、休耕田でのシソの無農薬栽培をはじめました。品種は在来品種「両面縮み」で種も自家採種しています。現在生産者は100人ほどで、お茶のように上だけを刈り取り、もみシソに加工しています。


――野生動物との闘いも〈(有)御浜天地〉
野生動物と闘うプラムちゃん
御浜天地は、夏草が梅の木の根元を覆い尽くしていました。このあたりは年間雨量3000ミリと多雨。しかも傾斜地なので除草剤などを使っているところは表土が流されてしまう。そのため、このくらいの草がちょうど良いとのこと。

5年目の梅は、まだ樹勢も低く、大人の背丈を少し越えるほどです。山を切り開いた傾斜地に見渡す限り4000本の梅が植えられています。昨年から収穫ができるようになり、今年は約20トンを収穫、あと3年ほどで成木になると約120トンの収穫が見込めます。「100トン収穫できるようになれば採算がとれる」と、山本章彦さん。梅11ヘクタール、みかん1ヘクタールの農地を山本さんと二人の研修生と犬の「プラムちゃん」で管理しています。

山本さんは近畿大学の農学部を出て、大阪に本社のある洗剤メーカーに勤務、仕事は同社が熊野に持っていた自然休養村の跡地に、ハーブ・薬草園をつくる仕事で、熊野に30歳までの5年間住んでいました。その後本社勤務となり、35歳になったときに、「農業をやりたい、熊野に住みたい」と仕事を探していたところ、御浜天地の生産担当を探していた王隠堂さんと出会います。

最初の頃は王隠堂さんが暇さえあれば来て、いろいろ教えてくれ、また五條の本部へ行って剪定の仕方などを教わりました。梅は1年に1メートルほど伸びるのですが、あまり大きくなると収穫しづらいことや台風の影響を考えて、40センチほど剪り戻します。

やっかいなアブラムシ対策には活性水を利用、「農薬を使わないためか、益虫のテントウムシが多く、アブラムシのでかたが違う」と感じています。肥料は近くの牧場で作っているバーク堆肥を入れています。しかし、山の農場の敵は害虫だけではありません。猿、鹿、ウサギ、イノシシなどが出没、畑を荒らし、「野生動物との攻防」の日々です。とくに50頭もの猿の群がカボチャを食い荒らし、しかもボス猿が逃げながら「ざまーみろ!」と挑発した時には、さすがの穏やかな山本さんも怒り心頭に。ここで活躍するのが犬のプラムちゃん、小さな体で野生動物を追い払うのです。

梅以外にも天日干しの切り干し大根も作ってみました。梅もきちんと穫れるようになれば、御浜天地で一次加工(塩漬け)までするか、検討中です。

そんな山本さんの夢は「先日地域のみかん農家の後継者たちと無茶々園の減農薬みかんの栽培を見学してきたのですが、みんな『目から鱗』と感激していた。自分はせっかく熊野が好きでここに来たのだから、自分たち世代の若手で、生産者グループを作っていきたい」。そうすれば「輸入農作物が入ってきて価格競争になったときも、自分たちは有機JASで差別化していくことができる」と話していました。


――カット野菜で無駄なく野菜を使う〈(株)オルト〉
キャベツを切る
野菜農家は出荷日を想定して生産計画をたてますが、気象状況や不測の事態に備えて、一般的に予定量の1.5倍くらい作付けします。余った野菜はほかに出荷できれば良いのですが、畑で「廃棄物」になってしまうことが多いのです。こうした野菜を無駄にせずきちんと消費していけないだろうか……カット野菜工場(株)オルトは「畑に残ってしまう野菜を、何とか全量消費したい」(王隠堂正悟哉さん)との思いで作られました。もちろんカット野菜市場が米国で400億円市場、日本でも100億円市場に育ってきていることもあります。会社名の「オルト」はイタリア語の「菜園」を意味する言葉。ここは平均年齢30歳台の若い人たちが活躍しています。王隠堂さんは名前でわかるとおり、二代目です。東京マイコープやジーピーエスで修行(?)していた時期もあるそうです。

総工費4億円をかけた工場は、HACCP(ハサップ)に対応できる衛生設備を備えています。この工場の一番の特徴は、これまで野菜の殺菌には次亜鉛素酸ナトリウムが使われていたのを、カット野菜工場として初めて、オゾン殺菌を取り入れたこと。営業担当の仲山勝浩さんは「現在おもに関西のスーパーに納品していますが、次亜鉛素酸ナトリウムを使っていないことにバイヤーさんは反応しますね」。また、産地がカット野菜工場を作ったのも、おそらく初めてとのこと。

現在ラインが稼働しているのは朝7時半から10時まで。生産量としてはキャベツ1トン、レタス500キログラム。「この3倍は生産可能で、この3倍動かさなければ赤字です」(正悟哉さん)。「有機は朝一番のラインで処理するが、比率は1%くらい。仕入れは有機専門店から。地域から集めるには品目別の扱い量が少なく、届けてもらうのが申し訳ない状況」(正悟哉さん)。「スーパーとしては品揃えとして有機を置いておきたいと考えているが、消費者としては通常品より20〜30円高いので手が伸びない」(仲山さん)。

商品はスーパーごと、商品ごとに中に詰める野菜や盛りつけ方が違います。季節ごとに変わるものもあります。注文書の盛りつけ図を見ながら、最後は手作業で盛りつけ。パートさんを含め30〜50人が働いています。今後はカットフルーツや鍋用野菜などの季節商品にも取り組んでいきたいと言います。目標は年商10億円。

正悟哉さんに、今後のグローバル化の中で輸入野菜とどう対抗していくか聞いてみました。「まず、畑にあるもの、残っているものをカット野菜にまわしていくことで、畑を無駄なくまわしていく。そうすることで価格はかなり下げられる」「大事なのは価格だけではなく鮮度や、履歴がはっきりしていること」、そして、残菜も牛の餌としてリサイクルすることで、地域循環型農業を推進することができると考えています。


  御浜天地の梅畑
■メモ
◎大紀コープファーム
奈良県五條市霊安寺町良峰1554 代表・王隠堂誠海。
奈良中西部吉野川南斜面の海抜200〜400メートルの丘陵地帯にあり、おもに梅と柿を生産。生産者は約100名。

◎(株)パンドラファーム
奈良県五條市野原町484-1 社長・和田宗隆。
紀伊半島一円で柿、梅、みかんなどの農産物を生産する生産者グループの地域共同センター。参加生産団体は、王隠堂農園、美吉野農園、大紀コープファーム、奈良ポラン生産者、あすかの会、御浜天地農場など。

◎(有)御浜天地
三重県南牟婁(みなみむろ)郡御浜町大字阿田和(あたわ)5420-12 代表・王隠堂誠海。

◎(株)オルト
和歌山県那賀郡桃山町調月(つかつき)523-12 代表・王隠堂誠海。
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