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産直産地はいま


第4回 有限会社大牧農場(樫木聖一さん、五十川賢治さん、村橋美学さん)
北海道十勝平野・音更(おとふけ)町の(有)大牧農場は3戸の農家の組織です。とはいってもさすが十勝平野、3戸の合計の耕作面積は224ヘクタール、大型の農業機械を駆使する大きなスケールの農業を展開しています。大牧農場のある光和地区は戦後開拓された地域で、現在3戸とも開拓三代目となる若い後継者が頑張っています。樫木聖一(かしき・しょういち)さん、五十川賢治(いそかわ・けんじ)さん、村橋美学(むらはし・よしたか)さんにこれからの農業の展望を聞きました。

ルポライター:コープニュース編集長 斉藤一志さん

〜『OPENまいんど』2003年7月号より〜

上から
樫木聖一さん(33歳)
五十川賢治さん(30歳)
村橋美学さん(25歳)

音更町は西に日高連峰、北には大雪山を望む、日本でも有数の畑作地帯で、かつては大豆の一大産地でした。酪農も盛んです。

大牧農場のある地域は戦後の昭和25年に入植・開拓が行われ、一代目は農機具もないなか、家畜の力と人力で原野の開拓に励みました。二代目は、開拓して広げた耕地に加えて離農する農家の土地を引き取って規模を拡大、積極的に機械化を進めて生産性を上げてきました。現在3戸とも小麦、ばれいしょ、大豆、小豆の輪作体系を取っています。


――頼もしい後継者“三人衆”の父親像は?
ばれいしょ定温庫内にある選別機。
樫木聖一さんの家は耕作面積76ヘクタールで、聖一さんは高校卒業と同時に「何の抵抗もなく」農業を継ぎ、15年目を迎えています。父の征治さんについては「うーん、すごい人だと思っています。尊敬していますが、でも、ちょっと口うるさいかな」。11月には結婚を控えていて、いま、本当に充実している様子でした。

五十川賢治さんの家は耕作面積100ヘクタール。中学生の頃から「農業をやろう」と決めていて、高校、短大も農業関係を選択しました。今年就農11年目になります。父の勝美さんについては、「開拓から入っていて、農作業、機械の整備・操作から人づきあいまで休まないでよく働く人で、すごいと思っています」。2歳になる長男・晴人くんがいますが、今年二番目の子どもが誕生する予定とのことです。

一番若い村橋美学さんの家は耕作面積48ヘクタール。普通高校を卒業した後、東京で1年を過ごし、アメリカのウエストバージニア州立大学に2年間留学してビジネス学を専攻しました。「ビジネスを学んでみて、農業経営は面白いと思いました。土地改良や農機具などかなりの投資がなされていますし」と就農を決め、今年で3年目。父の正明さんについては「父親の顔と経営者の顔はまるで違います。いままですべて自分でやってきたので、人に説明するのが苦手なのか、農作業となるとよく怒られています」といま修行中の様子。“雑学”をしてから農業を継ぐつもりだったと言います。

個性の違った意欲的な若い後継者が育っていて頼もしい限り。3人とも、農業に打ち込んでいる父の姿を“尊敬している”点で共通しているのは驚きでした。それに加えて、「とうちゃん」を支え、「とうちゃん」以上に頑張っている(五十川勝美代表談)「かあちゃん」たちの存在も大きいということです。音更町の農家戸数は約670戸、うち約3分の1に農業後継者がいるといい、毎年必ずひとりほどのペースでUターンの人もあるそうです。


――農業の先行きは決して暗くない!
大牧農場オリジナルの畑に合わせて作ったばれいしょの肥料。
大豆は輸入物に加え減反大豆で相場が下がるなど、経営的に厳しい環境におかれているのは他の地域と変わりませんが、農業の先行きについては3人とも「自分たちが頑張れば、暗くはない」という頼もしい考えです。

「中国野菜の残留農薬問題などで消費者の安全に対する意識がだいぶ変わってきています。組合員さんからは『安全でよいものでも、3割以上値段が違ったら敬遠してしまう。2割以内なら、子どものことを考えて安全でよいものを選びます』と言われました。力強い意見だなと。この声にこたえて、僕らも安全で安価でよいものを安定供給していきたい」。

この数年、生協組合員との交流や生消協への参加は、ほとんど3人が担当しています。生協の組合員や全国の生産者仲間との交流が“農業の先行きは暗くない”という、3人の共通の確信につながっています。


――消費者に対する責任感育んだ生協との産直
大牧農場には夏と冬の年2回、25人から30人規模で組合員が親子連れでばれいしょの収穫、定温庫での選別袋詰めなどを行う産地訪問を行います。訪問した組合員は「大牧農場のばれいしょは傷が多いと思っていたけど、畑でいざ収穫してみて、これはとても手作業では無理」と理解してくれたことがうれしかったと言います。

生協と産直をするようになって、自分たちが作った物に責任を感じるようになったというのも3人共通の思いです。「農協は出荷してしまった時点で終わりですが、生協との産直の場合、食べている人の顔が見えるし、自分たちの名前がついていますから」。


――恐かった信頼の揺らぎ――指定産地外牛肉混入とコロッケの製造中止
昨年12月の指定産地外牛肉の混入問題は、産直に重い課題を突きつけました。大牧農場ではコロッケの原料となるばれいしょを担当していましたが、急きょ製造中止となりました。

「原料に用意したのは規格外のばれいしょで、出荷準備が整っていたところでの中止だったので、大量に宙に浮いてしまい、率直に言ってかなり困りました。幸い、昨年末はばれいしょが全国的に不足気味で、あちこちにかけあって最終的にはさばけたんですが。それよりも僕たちが恐かったのは、組合員さんの生協に対する信頼が崩れることでした。肉でそうなったのならほかでもそうじゃないかと思われないかな、とですね」。


――三代目が描くこれからの大牧農場
牛糞と鶏糞を発酵させる堆肥舎。大型の撹拌機で切り返しながら発酵させ、発酵温度で雑草の種を除去する。
いま、最も充実している大牧農場ですが、今後の見通しを聞いてみました。

まず第一にあげてくれたのが、環境問題です。「うちの農場では15年ほど前から環境を意識してきていて、いま、堆肥事業に取り組んでいます。堆肥は前から取り入れてはいましたが、雑草の種がかなり混じるんですね。それで堆肥舎を建設し、発酵させて温度を上げ、雑草の種を減らしています」。十勝地区にはやる気さえあれば地域循環型農業を実現できる理想的な条件が揃っていると3人は言います。音更町の農協も関心を示してくれるようになりました。

第二は、法人組織への移行の問題です。開拓当初に開拓者1戸当たりの割当面積は10ヘクタールでしたが、この地域でも離農が相次いでおり、その農地を引き受けて規模拡大が図られてきました。しかし、「100ヘクタールが家族でやれる限度」で、それ以上となると、会社法人も考えていかねばならないといいます。「20年、30年先を考えると、農家戸数はいまの半分になると思うけど、そうなると1戸当たりの規模を倍にしないと農地が荒れることになる。農地は荒らしたくないですからね」。

大牧農場でも、機械化は頂点に達している反面、10年、20年後には父親世代がリタイアすることになります。その点からも何らかの法人組織は避けて通れない道と3人は考えています。「農家じゃないけど、意欲を持って農業をやりたいという人はいます。そういう人たちをうまく受け入れていく、その体制をこれから整えていければ、と思います」。

家族経営から法人組織へ移行すれば、生協と連携した食育など、個々の農家ではできなかった消費者を受け入れての事業の可能性も広がることでしょう。


――首都圏コープへの注文――“中身はおまかせ”の企画をぜひ
五十川勝美代表とお孫さん。
最後に首都圏コープに対する注文を聞きました。

一つは、注文量の見通しと安定化。「首都圏コープ自体が急速に大きくなったけど、そのなかで、需要バランスが読みづらくなる。大きいだけに1%狂っても誤差は大きい。無理な注文かも知れないけれど、見通しをもっと正確にできないかと思いますね」。

もう一つは“中身おまかせお楽しみ企画”の実現。「2〜3ヶ月に1回のスポット企画でいいから、豊作の時の農産物や畜産物を食べてもらう“お楽しみ企画”の週もあっていいんではないかと思いますね。我々だけでなく、畜産などほかの産地も含めて。部位バランスの関係であまっている部位、天候がよくて豊作の玉ねぎや葉物などを、例えば、3000円均一で、“中身は何が入るかお楽しみ”という風にすれば生協らしい企画になると思います。欠品をしないために余分に作付けしますが、余ったからと産直品を廃棄するなんていやですからね」。


取材後に五十川勝美代表は3人について、「我々の世代は何もないところから地域でもトップクラスの農業経営を作り上げてきたけれど、彼らはその到達点から農業に入ってきています。我々とは違うプレッシャーのなかにいると思いますが、それにすくまないように」と語っていました。

熟練した作物栽培の技術を受け継ぐだけでも大変なことですが、大牧農場の後継者3人には農地への愛着、開拓者魂を受け継ぎながらダイナミックな課題へチャレンジしてほしいと強く感じました。



堆肥製造施設。
■有限会社大牧農場メモ
事務所は北海道河東郡音更町西9線10番地。1997年10月の設立で構成員は3戸(10人)、代表取締役は五十川勝美さん。耕作面積は合計で224ヘクタール。主な作目はばれいしょ、小麦、ビート、大豆、小豆などで、連作障害を防ぐため、輪作を行っている。トラクターなど大型の耕作農機は各自が保有するほか、共同施設として3棟570坪の定温倉庫とばれいしょ用選果機、72坪の資材庫、200坪の堆肥製造施設がある。
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