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ホーム > 産直へのこだわり > 産直産地はいま > 第3回 佐原農産物供給センター(青柳宏幸さん)
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産直産地はいま


第3回 佐原農産物供給センター(青柳宏幸さん)
農事組合法人佐原農産物供給センターは千葉県の佐原市、栗源町、東庄町を中心に約100名の生産者がいます。同地域は水はけのいい関東ローム層の良質な土壌に恵まれ、昔からサツマイモなどの栽培が盛んで、かつてはデンプン加工業も盛んでした。昨年9月30日の台風21号で大きな塩害を受けたという同センター事業部の青柳宏幸(あおやぎ・ひろゆき)さんにインタビューしました。

ルポライター:コープニュース編集長 斉藤一志さん

〜『OPENまいんど』2003年6月号より〜


佐原農産物供給センター
センター事業部 青柳宏幸さん

佐原農産物供給センター(以下「センター」と略)を訪ねた日は、4月下旬にしては気温26度と異常な暑さの日。ただし、吹く風はさわやかで気持ちのよい日でした。広い集荷場にはネギの苗が置かれ、定植されるのを待っていました。


――農業と農家が好きだった
定植を待つネギの苗
青柳さんはセンターに就職してから4月に3年目を迎えました。大学を卒業する頃にセンター就職を勧められて「お願いします」と即答したといいます。そのわけは農家のライフスタイルが好きだったから。

「大学が八千代市で家から通っていたんですが、学生時代に農協のアルバイトをして、これが楽しかったんですね。仕事自体は重い肥料を担いだり、米袋を運んだりと楽ではなかったけれど、農家に行くと“お茶やっていきな”、一生懸命やっていると“頑張るね”と声をかけられて。一緒にアルバイトしていた友だちは仕事がきついと3カ月ほどでやめてしまいましたが、自分は楽しくて。農家とのふれあいが好きだったんです」。

センターに入ってからは、その思いをもっと強く感じて仕事をしています。

「農協は言われたことをやっていればそれですんだんですが、センターでは自分で考え責任を持って役割を担っていかねばならないのでやりがいがあります。確かに生産者との意見の違いなんかは時々あります。例えば事務局として“この新しい品目を”と提案しても、実際にリスクを負うのは生産者ですから。でも意見の違いから新しい方向が見えて来ることも少なくないんです」。


――“若造(わかぞう)くらぶ”――農業を楽しもう
いま、日本農業は輸入米の関税引き下げで自由化が一層進められる一方、減反原則廃止、中国野菜の輸入など存続の危機ともいえる厳しい状況を迎えています。そんな中で、青柳さんは佐原地域の農業問題として農業人口の減少と高齢化、後継者が育っていないことを一番にあげます。

センターでは後継者育成の問題に果敢にチャレンジしています。そのひとつが青年部の立ちあげです。

  センター横のマルチがかかっているところと家の間の耕地が“若造くらぶ”が坊ちゃんカボチャを作る予定地。意外に広い。
「昨年の6月に青年部として“若造くらぶ”を立ち上げました。インパクトのある名前でしょう。名誉会員(後見人!?)として首都圏コープ生消協議会の山森澄恵さんも入ってもらって、メンバーは13人。センターの職員もメンバーになっています。“若造くらぶ”では遊び感覚を大事にしているんです。というのも、イヤイヤ農業を継ぐんじゃなく、農業のおもしろさ、楽しさ、魅力を引き出していく中で後継者を増やしていこうというのが主旨だからなんです。この地域では親が齢をとってきたから農業を継がねばとか、隣近所の人に“長男だから継ぐべき”と言われてのスタートがけっこう多いんですが、これでは重い。もっと前向きに楽しく、ですね」。

「月に一回定例会を持っていますし、農業の勉強も初歩的なことからやっています。事務所の横に畑を確保して、“若造くらぶ”で坊ちゃんカボチャを作って活動資金にする計画もありますし、昨年11月23日にセンター前の畑で“センター祭り”を開いたときは、籾殻を使った焼き芋も担当しました。ゆくゆくは女性部(名称:農めーく)の活動の負担を軽くするようにしていきたい」。

その女性部“農めーく”を青柳さんは千葉で一番(?)元気な母ちゃんたちといいます。生協組合員との交流の最前線に立って、料理など各種講習会で引っ張りだこ。ホームページでも母ちゃんたちが考案したレシピを紹介するなど活動は活発で、生協では知らない人はいない存在になっているということです。

「女性が活動的なのはいいことで、活気の源になっているし、それにつられて父ちゃんたちの意識も変わってきていると思います。ただし、やはり家庭の仕事を持ち、農作業があり、それに加えて女性部活動がありますから大変なんです」。

「産直のいいところは生協組合員と交流できることです。同じ作って販売するという行為でも、一般量販の場合はリピーターは数でしか把握できないし顔も見えない。でも生協の場合、声にして、文章にして、話しあって“見られ続けている”し、こちらからも顔が見え励みになりますよ」。

ゆくゆくは女性部が受け持っている生協組合員との交流を青年部も分担して受け持ち、交流を拡大したいといいます。「それに、生産者の中で若い人の割合をもっと増やしていき、センターの若返りを図っていきたい」というのが青柳さんはじめ“若造くらぶ”のメンバーの希望です。


――地域環境保全・循環型農業こそ産地が生き残る道
早朝から行っている耕起作業の手を休めて話す香取政典常務理事。「5年ほど前から記帳が大事だと言ってきたが、今それが役立つ時代になった」。
ネギも生産しているセンターでは中国野菜の増加に大きな危機感を持ちましたが、中国産野菜の残留農薬問題が報道されたことから今は一息ついています。

「中国・山東省の日本のコンビニエンス・ストア系列のオーガニック栽培を視察に行きましたが、中国もいずれは日本の消費者にマッチした生産に変えてくると思います。常に先を見ていないとつぶされてしまう」と青柳さん。

センターではさきごろ、主要メンバーが集まって“Fプロジェクト”というビジョンを作りました。最大の課題として据えたのは、(1)今年中に堆肥センターを作ること、(2)販売拡大、(3)消費者や他産地との交流拡大、農外からの研修受け入れの3つ。

今後産地として生き残り発展していくためには「安心、おいしい」に加えて環境保全、資源循環を内容とした商品のブランド化が必要だというのがセンターの考え。そのためには、資源を循環させる野菜クズに鶏糞や牛糞を加えた堆肥づくりは欠かせません。安定した内容の堆肥づくりができるかどうか、課題も多いようです。

後継者難で増える遊休地を活用して生産を維持していくために、農業を志す農外からの若者を受け入れる交流・研修施設を作ることも“Fプロジェクト”の内容となっています。

日本の農業は「50アール以上の農地を所有するものでなければ新たに農地を購入できない」という農地法などの規制に守られてきましたが、この規制をはずし株式会社でも農業に参入できる道が取り沙汰されています。

株式会社の農業参入は賛否両論があるところですが、農業を続けられない個々の農家を生産組織が補完する形で耕地の荒れを防ぎ、地域全体として農業生産を維持していこうという試みが佐原農産物供給センターでも始まっています。

青柳さんの話を聞いていて、父ちゃんの頑張りに加えて母ちゃんが元気な産地、若者が育つ産地は活気があるという印象を強くしました。日本の食料自給率の向上は元気な産地を抜きにしては考えられません。それを支えているのは紛れもなく生協の産直事業。生協の担当者が日々届ける産直野菜の一つひとつが産地の支えになっているといっても過言ではないようです。


――生き物が相手――農業への理解深める努力をもっと
  硝酸態チッソの比較実験ほ場
最後に、首都圏コープに注文はないか聞いてみました。

「昨年の台風では塩害がここまできて、作物の見映えは悪く収量も通常の8割程度とかなり落ちました。農薬を使えば多少は回復したんでしょうが、基準を守って頑張った。出荷した野菜には“おわびカード”をつけて事情を説明したんですが、2〜3件、生産者の所へ“姿が悪い”など電話が来まして、受けた生産者はガックリでした。農業は生き物相手で天候に左右されます。この点を理解してもらい、産地と消費者がもっと歩み寄れるよう努力したいと思っています」。

取材を終えて事務所前にあるほうれん草と小松菜の硝酸態チッソの実験ほ場を見学しました。他に各生産者でも試験を行っています。ほ場は硝酸態チッソ分30%、50%の比較を行っていました。その隣の畑では、常務理事の香取政典さんが早朝からトラクターによる春作業の真っ最中。

「産直団体のトップはネクタイしめてばかりじゃだめだよ」と香取さん。青柳さんを振り返って「若いもんはまだ苦労を知らないんだから夢はでっかく持ってほしいね。まだまだ小粒」。

トラクターの手を休めて話す香取さんの畑の向こうには、薄緑色に芽吹きかけた雑木林があり、ウグイスなどの野鳥がのどかに鳴いていました。


佐原農産物供給センターの事務所兼集荷場
■佐原農産物供給センターメモ
事務所は佐原市九美上12-151。正組合員62名、準組合員45名、仲橋正廣代表理事。組合員の中心年代は45歳から55歳。12名の職員がいる。1981年に生協と鶏卵産直を行う組織として6名の生産者で設立。旧たつみ生協などとの提携を経て、89年から首都圏コープと提携。95年以降は卵の供給をやめて野菜1本に。木酢液やニンニク液など漢方薬での防除などに取り組む。大根、サツマイモ、ゴボウ、人参、ジャガイモなどの根菜類、キャベツ、ブロッコリー、レタス、ナスや長ネギ、小カブ、ほうれん草など各種野菜を供給。

■青柳宏幸(あおやぎ・ひろゆき)
佐原市出身、24歳。八千代市の東京成徳大学卒業と共に供給センターの職員になって3年目。現在(株)ジーピーエス担当。自宅は水田3.7ヘクタール、栗林50アールを経営する農家。
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