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ホーム > 産直へのこだわり > 産直産地はいま > 第2回 ジョイファーム小田原(鳥居啓宣さん)
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産直産地はいま


第2回 ジョイファーム小田原(鳥居啓宣さん)
新宿からロマンスカーで1時間強でつく小田原市にある「ジョイファーム小田原」は、柑橘類やキウイフルーツなどの生産者との交流が容易にできる貴重な近郊産地。専務理事を務める鳥居啓宣さんに、海に面した急傾斜地にある柑橘類の園地を案内してもらい、産直について話を聞きました。

ルポライター:コープニュース編集長 斉藤一志さん

〜『OPENまいんど』2003年5月号より〜


ジョイファーム小田原
鳥居啓宣専務

――鳥居さんが農業を継いだときの様子をまず話してくれませんか。
「農業は本当はいやで、競輪選手になりたかったんですよ。で、普通高校に行ったんですが、高校の先生に土地があるんなら農業をやれと強く勧められて県立農業大学校(2年制)に入ったんです。百姓をやる気になったのは、ちょっと気恥ずかしいんですが、当時みかんの価格が低迷していて親父が苦しんでいる姿を見てからですね」
 
「大学校を卒業して20歳の頃、それまでの温州みかんからハウスみかんやキウイフルーツ、1〜2年後にスモモも植えました。切り換え直後でハウスみかんは木にハウスを掛けるだけですから収穫はありましたが、それ以外は収穫も収入もない、食っていくために土方もしましたね。今は、ハウスみかん30アール、キウイフルーツ、梅など合計2ヘクタールの園地がありますが、これは親父が山を開拓して開いてくれた、感謝しています」


――首都圏コープとの産直をふりかってみてどうですか。
熱海に近い米神地区のみかん畑。毎年、耕作放棄で荒れる園地が増えているともいう。
「今、社長をやっている長谷川功さんが3人ほどで当時の江戸川生協やふれあい生協(現東京マイコープ)と産直していたんですが、16年ほど前、長谷川さんと知り合ってから産直を始めました。“東京に配達に行くからつき合えよ”といわれたのがスタートでした。市場しか知らなかったので、最初は生協ってのはなかなかわからなかったですね」

「単協と産直していた当時は生産者も少人数で全量引き取ってもらえました。ところが、首都圏コープの生協が次々と合併して大きくなっていく。けれど農家は同じ品目のもの同士、産地同士が一緒になれるわけじゃない。取り残される産地と伸びる産地、生協合併がかなり産地の盛衰に影響したと思いますね」

「われわれも生協が大きくなるにつれて、これは大変だ、どうする、オレ達もでかくなるしかないと、仲間を増やしました。とはいっても正直、石けん運動や水の環境を守るということでは仲間は増えない。“収入が安定するからやらないか”と、これが入り口ですよね。長谷川社長の言葉を借りれば、生協へ5年出せばわかるって。たしかに5年ほど産直をすると経営が安定する、その中で農薬をもっと減らそうなどと本物の意欲が出るんです」

「小田原の場合、以前からみかんの共選出荷をやっていて各地域にリーダーがいました。知り合いをたどりながら、こうしたリーダーを巻き込めたのが良かったなと思います。各地域のリーダーが力を発揮してくれましたから」 


――そんな中で生消協からはかなり刺激を受けました?
「ええ、かなり受けていますよ。首都圏コープに生消協があることが他の生協との大きな差になっていると僕は思います。最初は米沢郷の伊藤幸吉さんのグループなど他の産地の人が雲の上の人のように見えました。例えば無茶々園。愛媛のあの地域では欠かせない存在になっている。愛媛の農協は愛媛みかんのブランドを創ったけれど、無茶々園はその上を行くブランドになった、すごいと思いますね」

「今回の生協の総会では“生消協とはなにか”“産直とは何か”が議論されて持ち越しになりましたが、僕は産直とは生産者が中間コストを省いて直接消費者(生協)に農産物を渡すことと、シンプルに考えています。肉の混入問題もありましたが、産直とは別の問題だと思います」


――組合員との交流や産地見学はどう考えていますか。
「どんなでき?」。収穫中の清見オレンジをのぞき込む鳥居専務(右端)。後ろの柑橘の木にはヒヨドリなどの鳥害防止ネットがかけられている。
「やっぱりいいですね。来てもらって、“商品買ってますよ”と言われると嬉しい。お客さんとして来てもらってもいいし、農作業のためでもいいし、そんな機会に日頃疑問に思っていることを質問してもらってもいいし、交流は大歓迎です」

「商品を利用してくれることにお礼したくて産地めぐりをするのも、これはこれでいいと思うんです。ただ、遠隔地の産地が交流するとなると費用や時間の関係からせいぜい年に5、6回、組合員の代表を受け入れるということにならざるを得ないんです。小田原は首都圏に近いから生協の組合員がバスを仕立てて日帰りで来ることができるわけですから、これをもっと産地同士が協力して活用してもいいと僕は思うんです」

「愛媛や九州の産地から生産者が1〜2名来て、小田原のみかん園でみかんとみかんの木を見ながら生協の組合員と交流する、疑問にも答えていく。これなら、費用的にも時間的にももっと頻繁に濃密に交流することが可能です。タマネギだって組合員が北海道へ行くのは大変だけれど、近郊産地に北海道の生産者が来て、そこのタマネギ畑で交流する。そういう方向で、生協も生消協も考えていいんじゃないかと思います。こんなことを言うと他の産地から、自分の所ばかりを売り込もうとしているとひがまれるかもしれませんが、そうじゃなくてですね」


――後継者はそれぞれ順調に育っているんですか。
「自分でやれるところまでは頑張ってその後は子どもに考えさせるという人が多いと思います。でも、つい最近トヨタ自動車に勤めていた30歳代前半の息子さんがトヨタを退職して後継者になりました。いま、集荷場で働いている50歳の人もトヨタに勤めていたんですが、こっちの方がやりがいがあると言って来ているんです」

「後継者の問題は個々の農家の問題ではありますが、組織としても考えていかねばならない問題だと思っています。今、100人を越える生産者が入っていますが、10年後リタイアなどで生産者が減っても組織としてどう生産量を確保していくかですね。組織として農地を保ち、生産量を確保していくとなると雇用が生じてきますからその点の苦労が出てくると思います。けれど転職し「農業が好き」の一心でがんばっている人たちもいますし、共にがんばっていきたいと思います」


清見オレンジの収穫の手を休めて話してくれた米神支部の廣石計典さんと奥さん。後ろには太平洋に向かって急傾斜で落ち込む柑橘類の畑が連なる。
――5年先、10年先どうなっていたいですか。
「組合員からもっと小田原に来てもらえるように何らかの方策をもっと考えていきたいし、もっと利用してもらえる方策を生協任せじゃなく、産地も考える時期になったと思っています。ここまで来るにはジーピーエスや連合の人は産地を支えながら大変だったと思います。この前の生消協でも話が出ましたが、産地が本当の意味で頑張らないと。これまではどちらかというと“突っ走ってきた”という感じだったけれど、これからはパルシステムの商品のすぐれた点を維持しながら、全国の産地が新しい価値を一つひとつ積み増していく、そういう5年、10年にしたいと思っています」


――課題は放棄地と後継者問題
話を聞く前に、鳥居専務が車でまず案内してくれたのは熱海に近い米神地区の廣石計典(ひろいし・かずのり)さんの晩柑類の畑でした。太平洋に向かって落ち込む急傾斜地にていねいに石垣が築かれ、千枚田のように北限のみかん園が続きます。

清見オレンジの収穫の手を休めて話してくれた廣石さんによると、小田原のみかん栽培は150年ほどの歴史をもっており、最盛期には新潟や東北方面から冬の出稼ぎを受け入れて収穫したそうです。廣石さんの畑は晩柑類約16種類を有機肥料100%で栽培、雑草を抑制するために落花生の殻を敷くなど工夫を凝らしています。ヒヨドリなどの害があり、樹木全体をネットで覆ったものも目に付きます。

印象に残ったのはゴールデンオレンジ。ゴルフボールよりひとまわり大きいレモンのような色をした柑橘で、上品で鮮烈な酸味と控えめな甘さが絶妙、「天然のレモンスカッシュ」という表現がぴったりです。小田原で7トン、静岡で9トンほどの収穫量。パルシステムでは4月4回に企画されました。

見渡す限りの傾斜地がみかん園となっている同地区ですが、所々は荒れるに任せ竹やぶになっているところもあり、放棄地は年々増えているといいます。竹薮の中に鈴なりの実を付けてぽつんと放置されているみかんの木はなんともわびしく感じました。

廣石さんのところも今のところ後継者はいません。「農家ではないが柑橘栽培をやりたいという若者もおり、畑を確保するため市と交渉している」(鳥居専務)という話もあります。農地法の制約などがあり、これからの大きな課題です。

昨年12月に完成したジョイファーム小田原の新しい集荷場。環境保全型農業推進の施設として、農事組合法人小田原産直組合が神奈川県の補助を受け建設。集荷場には冷蔵施設も完備している。
■ジョイファーム小田原メモ
事務所は小田原市曽我岸531。1994年に有限会社として設立。現在、8支部119人。無農薬キウイフルーツ、ネーブル、青島みかん、ハウスみかん、ゴールデンオレンジ、青梅、菜花などの産直品を生産。首都圏コープとは、80年代に長谷川功社長が江戸川生協やふれあい生協と産直を始めてからの交流がある。昨年12月、小田原市内の生産者をまとめた農事組合法人小田原産直組合を設立して県の補助を受け冷蔵施設を備えた新しい出荷所と事務所を新築している。
ジョイファーム小田原ホームページへ

■鳥居啓宣(とりい・ひろのぶ)
小田原市生まれ44歳。神奈川県農業大学校(2年制)を卒業して、農業後継者となる。28歳の時に長谷川社長と共に産直を開始。キウイフルーツ、梅、ハウスみかんなど約2ヘクタールを経営。
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