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ホーム > 産直へのこだわり > 産直産地はいま > 第1回 沃土会(矢内克志さん)
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産直産地はいま


第1回 沃土会(矢内克志さん)
埼玉県深谷市の隣にある岡部町は利根川の沖積層と関東ローム層の二つの地域からなる肥沃な土地で、昔から深谷ねぎ、ほうれん草、ブロッコリーなどの産地として有名です。ここで、微生物に着目した土作りを大切にし、無農薬・減農薬の野菜作りをして作物本来の“うまさ”を追求し、産直に取り組んでいるのが沃土会。「今年は春が一ヶ月ほど早いと読んで、今春作業の準備に忙しいんです」という同会の矢内克志さんにインタビューしました。

ルポライター:コープニュース編集長 斉藤一志さん

〜『OPENまいんど』2003年4月号より〜


沃土会 矢内克志さん

――矢内さんが農業を継いで沃土会に入った経緯は。
「沃土会の出発は親父の代に遡るんです。当初、近くの(株)正直村の一員としてやっていたんですが、作った物がそこでは全量はけなくなった。そこで、当時の埼玉わかば生協、首都圏コープ連合などに産直品として出荷するようになりました」

「当時私は農協(JA深谷市)に勤めていて、いずれは農業を継ごうと思っていたんです。共済から経済に移り肥料配達などやりました。結構楽しかったし、農家に行ったときはいろいろ教えてもらいました」

「そのころ沃土会の運送の手伝いで、出荷される沃土会の野菜を見てびっくり。市場の野菜ばかり見ていたので、こんなの届けたら怒られるよ、農協じゃみんな返品だよ、と。無農薬だからキャベツなんか虫がむしゃむしゃ食っている。生協ってすごいところだなと、正直思いました。でも同時に有機、無農薬(減農薬)でもやっていけるなとも思いました」

「自分で始めて奥が深いなと感じてきています。無農薬なら何でもいいという時代じゃない。品質のいいもの、野菜本来の味がするものを追求しないとだめです」


畑の横に積まれている有機資材の稲わら。1.5ヘクタールの自家水田でコンバイン刈りした稲わらを20キロのロールにしてある。耕起の際に畑にすきこみぼかし堆肥とする。
――土づくりについてお聞かせ下さい。
「私たちはカルスNC-R(※)を使い、基本は有機物を投入することによって土中の微生物を活性化させるやり方です。会員全体の品質をできるだけ統一して底上げするために、失敗事例も含めて勉強会をしています。定例会は月一回、後は年二回作付け・品目会議をやっています」

※カルスNC-Rによる微生物農法
カルスNC-Rはヨーグルトの乳酸菌や日本酒の酵母菌などを主体とした嫌気性複合微生物で蛇紋岩などを担体としている。カルスNC-Rを生・未熟の有機物と一緒にすきこむと切り返しの必要もなく、土中堆肥化が進む。堆肥化は作物の生育・収穫期間中同時進行で進み、品質のいい作物を育てると共に、圃場の改良につながって病害虫の被害を軽減する。


――通常の野菜とは違うという手応えを感じますか。
「特に自分の野菜は愛着もあるしうまい。味にはうるさくなりますね。興味があるから、人のも食べて比較したくなる。はっきり言って通常栽培のものはうまくない。みんなとにかく味にはうるさいんですよ」


野菜栽培基準
――有機・無農薬というと農作業がえらくきついというイメージです。
「何を考えてやるか、ということが一番大切。単に“化学肥料を使うな、農薬を使うな”といっても、ぎりぎりの労力でやっている人は“冗談じゃない”となる。作業は楽ではないけれど、考え方を(強制的に)植え付けるのじゃなく、基本から意思を統一していく、この点で事務局は努力しています。無農薬で作物ができると本当に嬉しい。化学肥料を使わないとできなかったものが、有機100%でできると嬉しい。そういう喜びを分かち合える場を少しでも多く増やしたいと思います。努力している人が馬鹿を見ることのない、正直者がきちんと評価される会にしていきたい」

「基本は有機・無農薬の上で、本当にうまいもの、品質の良いものを追求すること。会の20代の後継者には有機、無農薬を追求するあまり、いい品質、おいしさを忘れている場合があるんです。年輩者は土地にあったおいしくて品質の良いものを作る技術を持っているし、若い人はいい資材や使い方などについて現代的な情報収集力がある。それをうまく融合して気候風土にあったどこにも負けない農産物を作るのがベストですね」


――他の会員の後継者は育っているんですか。
「40人のうち正会員は20人ほどですが、半分ほどかな。おおむね50代後半から60にかけてですが、“子供に農業を継がせたい”という思いはあまり強くないのが実情です」

「もちろん若い第二世代も何人もいます。“何で百姓を始めたの?”って聞くと、“いやあ、親父の背中を見ていたら”という話しになる。親が一生懸命やっていれば、子どもは感じるんですね。会員以外でも、親父さんは農協出荷をしていたけれど、後継者は沃土会へ希望を持って入ってくるケースも少なくありません。後継者ができるとおやじさんも真剣に方向性を考えますね」


ミニトマトのハウスで出来具合を調べる矢内さん。昨年10月に定植し、今が最盛期。食べると、甘味が強くトマト独特の香りもして本当にうまい。7月頃まで収穫が続く。
――産直に取り組んできての感想を。
「消費者と直接付き合いができることが一番です。来た人は沃土会の野菜をみんな “うまいうまい”と言ってくれる。直接アピールできるし、口コミなんかで広めてもらえる、そういう良さがあります。思いや苦労、努力も理解してもらえるとやりがいが出てきます」


――農作業をやりながら見学受入れとなると負担が大変なんじゃないですか。
「企業だったら営業回りがありますが、来てもらえるんですからありがたい、大歓迎です。連絡があると生産者が必ず集まっています」


――1月に公開確認会を開きましたが。
「正直、1ヶ月ほどは準備に忙殺されて、終わってからやっと本線(農作業)に戻れた感じです。行政側の沃土会を見る目が(これは本物だと)明らかに変わりました。生産者の意識も顕著に変わったし、準備作業を通じて事務局体制が随分強化されましたね」

集荷場兼事務所
■沃土会メモ
事務所は埼玉県大里郡岡部町岡3061-4。会員約40人。会員は水田プラス野菜作で耕作面積は約60ヘクタール、1人あたり平均耕作面積は約1.5ヘクタール。1980年に自然食関係の(株)自然村の生産者として有機栽培、微生物を利用した農法を開始。83年に旧埼玉わかば生協と提携、84年から首都圏コープ連合と提携。99年に沃土会事務局を法人化し有限会社とする。有機物に微生物(カルス)を取り入れて自然農法と同等の土づくり、土壌の活性化を熱意を込めて行う。葉もの、ブロッコリー、トマト等の果菜、ネギ、バレイショ等の根菜など各種野菜を生産。
沃土会ホームページへ

事務所にかけてある矢内さんの奥さん直筆の書。『身土不二(しんどふじ)』とは、人の身体とその人が住んでいる環境とは密接な関係があり、住んでいる土地で採れた旬の食べ物を食べることで健康を維持するという仏の教え。
■矢内克志(やない・かつし)
1964年岡部町生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、JA深谷市に入職。95年退職し農業を継ぐ。現在、野菜と米作の傍ら事務局を兼務。水田1.5ヘクタール、野菜約2ヘクタール、ハウス20アール(2棟)。
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