■20年前も問題となったISD条項

会場いっぱいの参加がありました |
学習会には、パルシステム共済連のたすけあい活動委員会の委員をはじめ、役職員などおよそ70名が参加しました。
色平さんはまず、TPPが大きな影響を与える可能性のひとつとして、ISD条項を挙げました。ISD条項は、企業が投資先の国の対応によって損害を受けた場合、国連の仲裁機関などを通じてその国を訴えることができるというものです。これにより、国の法制度を超えて企業が活動できるようになる可能性があります。
「1996年にOECD加盟国で交渉していた多国間投資協定(MAI)でも、同じような条項の存在が明らかになり、協定はとん挫しました。秘密交渉のため内容は分かりませんが、きわめて慎重な姿勢が必要です」と、色平さんは紹介しました。
医療分野においてTPPで危惧されているのは、国民皆保険制度の存続です。ISD条項によって、皆保険制度自体が企業から「民間保険の加入を妨げる」として訴えられる可能性があります。
また、皆保険制度の対象外となっている医療と組み合わせた混合診療の全面解禁については「医師や看護師といった限られた医療資源を高額医療に振り分けることになれば、お金を持たない人はいま以上に医療を受けにくくなります。報酬の高い地域へ医師は集まり、医療が空洞化する地域が拡大するでしょう」と指摘しました。
■共同出資が結果として地域を守る

講演する色平さん |
こうした医療制度の崩壊を避けるため、色平さんは協同組合の役割に大きな期待を寄せています。「メンバーシップよって成り立つ協同組合は『売りたい側』からすれば、『取引上フェアじゃない存在』になります。不平等を解決するために生まれた協同組合は、こうした多国籍企業のような考えとは対照的なものなのです」と話しました。
1900年に「産業組合法」の制定によって始まった生協や農協などの協同組合は「反産運動」と呼ばれる反対運動を乗り越えて今日まで発展してきました。色平さんは「地域の人々が共同で出資し、支持を受けているからこそ、結果として地域が守られます」と語ります。その例として農協などによる農村地域での病院経営を挙げ、米国や韓国などの事例を交えながら、世界の現状を紹介しました。
最後に「経済的な自由が高まりすぎると『むさぼる自由』『餓死する自由』が横行します。それを防ぐためには、多国籍企業ではなく国家がある程度機能し、富の再分配を行うことが必要です。もちろん現在の医療制度にも課題はありますが、信頼関係に基づいた人のつながりが医療には必要です。その意味でも、協同組合の役割はこれからますます重くなるでしょう」と提起しました。
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