
会場いっぱいの参加者が集まりました |
■資源循環で地域を活性化
パルシステム連合会は産直産地とともに、食料自給率の向上や資源循環型の地域づくりを目的とした「日本型畜産」を進めています。青果を生産する耕作生産者と肉やたまごを生産する畜産生産者が、それぞれ持つ資源を提供しあう「耕畜連携」や薬剤に頼らず健康な家畜を育てる手法を確立することで、食と農をつなぎ、いのちと環境を守る取り組みです。
「パルシステム日本型畜産集会」は9月10日(火)東京・新宿区のパルシステム連合会東新宿本部で開催されました。生協役職員や畜産生産者など150名が参加し、資源循環をめぐる連携の可能性や各産地での事例などを共有しました。

講演する信岡准教授 |
■課題は「消費者理解」と「コストダウン」
東京農業大学の信岡誠治准教授による講演「飼料用米の拡大・定着への方策〜耕畜消連携のあり方〜」では、休耕田を活用した飼料米や稲ホールクロップサイレージ(WCS※)の可能性と今後の課題が解説されました。
信岡准教授は、休耕田を活用して飼料米を生産することの利点としては主に(1)食料自給率の向上(2)食の安全と消費者の健康増進(3)地域経済への波及効果(4)環境保全への貢献(5)循環型社会の実現――の5点があるといいます。鶏では内臓器官が発達し、きれいで健康的に育ったそうです。
飼料用米が国内で定着するためのポイントとして「消費者の理解」と「コストダウン」の2点を挙げました。消費者の理解については「飼料が変われば、当然、色や味が変わります。トウモロコシに代えて米を与えると、卵黄や脂肪が白くなり、味はさっぱりします。これを消費者が納得して購入することが必要です」と話しました。
コストについては、手間がかからず収量の多い品種の開発や、食用米と同等の品質管理を不要とする流通体制の確立、政府の継続的な支援などが課題として示されました。信岡准教授は「品種改良はもちろん、苗を育てず直接種をまいたり、合理的な保管方法を確立したりする工夫があれば、大幅なコストダウンが可能です。今後も先入観にとらわれない研究を続けます」と話しました。
※WCS(ホールクロップサイレージ)=稲を茎葉ごと収穫し発酵させた飼料。主に牛に給餌されています。
■全国の先進事例を共有しました

北見部会長 |
日本生協連の内山和夫産直グループマネージャーは「生協における飼料米の取組みについて」をテーマに現在の状況を紹介しました。日本生協連の調査によれば、2009年度は国内で生産される飼料用米の約65%をパルシステムなど生協の事業が支えていました。その後、政府の支援制度が整ったことで飼料米の作付面積が急激に拡大しましたが、全国の生協の取り組みは先進事例として注目されています。
続いて、産直産地4団体から事例を報告しました。「日本のこめ豚」の産地、ポークランドグループは「滅菌」ではなく菌のバランスを考えた豚舎を整備することで、抵抗力のある健康な豚を飼育しています。東日本大震災の飼料不足では、地元の飼料米を使用することで、多くの豚が餓死を免れました。豊下勝彦代表は「あの経験は、飼料を海外依存している危うさを改めて認識させられました。今後も地域資源を活用した養豚を追求していきます」と話しました。
「までっこのこめ鶏」の産地である十文字チキンカンパニーは、地元、岩手県軽米町産の飼料米を使用する一方、排出される鶏ふんをたい肥化し、耕作生産者へ提供するという資源循環を構築しています。パルシステムのハムやウインナーにも原料を供給する山形コープ豚産直協議会は、多くの生産者が耕作と畜産を兼業する複合農家です。自ら育てた飼料米を家畜に与え、ふん尿をたい肥化してほ場へ還元しています。
鶏肉産地の米沢郷牧場は、自前の飼料工場を作り薬剤に頼らない飼料設計を行っています。鶏の健康や飼料米の活用だけでなく、エネルギーの自給化にも取り組みたい考えです。伊藤幸蔵社長は「信岡准教授の言うとおり、消費者の理解と購買がなければ日本型畜産は成り立ちません。耕畜連携ではなく、耕畜消連携が必要です」と訴えました。
最後にパルシステム生産者・消費者協議会の北見則弘畜産部会長は「飼料や燃料の高騰で、畜産をめぐる環境はますます厳しくなっています。それでも、みなさんは信念を持ち、経済的な負担を覚悟して日本型畜産の実現に取り組んでいることを忘れないでください」と参加者に呼びかけました。
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