■除染土を裏庭に放置せざるを得ない

多くの参加者が集まりました |
学習会「『原発事故子供被災者支援法』と現状」は4月11日(木)、東京・新宿区の東新宿本部で開催し、パルシステムグループの役職員50人が参加しました。国際環境NGOの日本法人、FoEジャパンの満田夏花(みつたかんな)さんを講師に、2012年6月に成立した「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(子ども・被災者支援法)の内容を中心に学びました。
原発事故以降、政府では放射線量に基づき「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」を設定していますが、区域が解除されるには、積算線量で年間20ミリシーベルトが基準となっています。これは、事故前の日本の基準(同1ミリシーベルト)はもちろん、ドイツの放射線管理区域における基準(5ミリシーベルト)、国内の放射線管理区域で働く際の基準(5.2ミリシーベルト)を大きく上回る数値です。
そのため、避難区域外でも高い放射線量にある地域は少なくありません。福島県庁舎にほど近い福島市渡利地区では、現在も1時間当たり4マイクロシーベルト(高さ1m)を超える線量を観測するところもあります。また、除染のためにはぎ取った土も、仮置き場に野積みされており、なかには自宅の裏庭で放置せざるを得ないケースも多くあるそうです。
■幅広い被災者を対象にする支援法

講師の満田さん |
こうしたなか、原発事故で被災した人々を幅広く支援することを目的に、超党派の議員で子ども・被災者支援法案が提出され、2012年6月に国会で可決・成立しました。
現行の避難区域よりも広い地域を「支援対象地域」に定め、健康診断や医療費の減免、自主避難時における住宅や就業、移動などについて幅広く支援することが定められています。
しかし、成立から10カ月が経過した現在も、法律に基づく実施がされていません。満田さんは「支援対象地域の線引きに対して自治体の思惑がからんでいることや、健康影響に対する政府の過小な評価などが原因です」と説明しました。
子どもの健康影響では2月、疑いを含め10人から甲状腺がんが見つかりました。受診対象者の3万8千人と比較すれば小さな数字ですが「同年代の日本人り患率(10万人当たり0.87人)と比べると、統計上は『多発している』状態です。チェルノブイリの事例からも、年を追うごとにその数は増加する可能性が高いと考えます」といいます。
満田さんは「自主避難している人も、地域にとどまっている人も、経済的、精神的な苦痛を感じています」と述べ、子どもの健康被害を防ぐため、週末や長期休暇を放射線量の低い地域で過ごす保養活動を紹介しました。参加者からは「子どもが外で遊べて久しぶりに楽しそうでした」「これからも制限のない生活を送らせてあげたいです」などの感想が寄せられているそうです。
■自主避難者から「法の有効運用を」
講演後、福島市から東京都内へ自主避難している二瓶和子さん(スノー・ドロップ代表)に、当時の体験を語ってもらいました。子どもが3歳と1歳だった二瓶さんは、家族と話し合って東京の親類宅へ避難しました。避難後は「同じような境遇にいる人たちと知り合う機会も行政のサポートもなく、孤立していました」と振り返ります。
子ども・被災者支援法については「法律の存在も知らない人がほとんどではないでしょうか。福島の地元では『もうあきらめている』という声も聞こえます。声を大にして、法律が有効に運用されるよう訴えていきたいです」と話しました。
|