■TPPにおけるパルシステムの考え
TPP(環太平洋連携協定)は、工業製品や農産品、金融サービスなど加盟国の間で取引される品目について関税を完全撤廃しようとする多国間の協定です。米国、豪州、メキシコ、カナダなどの11カ国が現在、参加を表明しており協議を続けています。
パルシステムでは、TPPへの参加は食の安全や農業などくらし全般に重大な影響を与え、またTPPは共生型・互恵型の協定とは言えないことや、一部の巨大企業や富裕層の経済優先の成長だけを生み出す協定であると考え、交渉参加への反対を他団体とともに強く政府へ要請しています。
■林農水相らへ要請書を手渡しました
 林農水相に反対を訴える吉森理事長 |
安倍晋三首相が訪米し2月22日(金)に行われた日米首脳会談以降、TPP交渉参加表明が急速に進みかねない情勢となってきました。これを受けてパルシステム連合会は2月27日(水)、高橋はるみ北海道知事をはじめ議会、JA中央会、農民連盟、経済連合会、商工会議所連合会、生活協同組合連合会、漁業協同組合連合会の各代表者とともに、中央省庁などへの要請行動を実施しました。
要請先は、自民党本部、農林水産省、各国会議員です。パルシステムグループからは、パルシステム東京の吉森弘子理事長(パルシステム連合会理事)、パルシステム神奈川ゆめコープ・吉中由紀理事長(同)が代表して参加しました。林芳正農林水産大臣や塩崎自民党政務調査会長代理などへ要請書を手渡しました。
 佐藤農水審議官に要請書を手渡す吉中理事長 |
吉森、吉中両理事長は「130万人の組合員代表として要請します。パルシステムは産直活動を通じ、国産の農畜産物や加工食品を食べることで産業のみならず地域づくりにも貢献してきたと考えています。TPPによって安心して食べられる食品を選べなくなることや地域のくらし全般に影響をおよぼすことを心配しており、交渉参加に強く反対します」と、それぞれ訴えました。
●政府・与党への要請先
訪問先 |
要請先 |
自民党 |
塩崎 恭久 政務調査会長代理 |
農林水産省 |
林 芳正 大臣
皆川 芳嗣 事務次官
佐藤 正典 審議官ほか |
●政府・与党へ提出した要請書全文
日本政府のTPP交渉参加表明に強く反対します
パルシステム生活協同組合連合会
理事長 山本 伸司
2013年2月22日におこなわれた日米首脳会談により、安倍首相は「聖域なき関税撤廃が前提ではないとの認識になった」として、近日中にTPP交渉参加を表明すると報道されています。
私たちパルシステム連合会は、この参加表明に対して強く反対するとともに、あらためてTPPに反対する私たちの考えを表明します。
I .TPP交渉への参加を表明しないよう強く要請します。
1.拙速な意思表明は避けるべきです。
- TPPは農業問題に留まらず、国民生活のさまざまな分野に多大な影響を与えることが懸念されます。それにも関わらず、日米首脳会談から間をおかずに政府・与党内で参加表明がなされようとしているのは、明らかに急ぎすぎです。国の重大な選択にも関わらず、あまりにも議論が不足しています。拙速な意思表明は避けるべきです。
2.国民のさまざまな懸念に何ら答えないまま参加表明することは許されません。
- TPPに対して多くの国民がさまざまな懸念を持ち、政府に説明を求めてきました。しかし未だにTPPに関する情報は国民に伝えられることはなく、国民的な議論もほとんどなされていません。国民のさまざまな懸念に対し、何ら答えないままに、TPP交渉への参加を表明することは許されることではありません。この段階でのTPP交渉の参加表明は、自民党の選挙公約にすら反するものと言わざるを得ません。
3.TPPに関する自民党の選挙公約である6項目すべてが守られる保証がありません。
- 自民党は先の衆議院選挙において、TPPに関する公約(TPP交渉参加の判断基準)として以下の6つを約束しました。しかし、日米首脳会談後、「聖域なき関税撤廃」についてしか議論がなされておらず、他の5項目の維持は何ら保証されていません。選挙公約の逸脱といわざるを得ません。
- 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
- 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
- 国民皆保険制度を守る。
- 食の安全安心の基準を守る。
- 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
- 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
II .私たちパルシステムのTPPに対する考え方をお伝えします。
- 私たちパルシステムグループは「心豊かなくらし」「共生の社会」をグループの理念として掲げ、助け合いの精神を基本として、お互いの信頼を基礎とする産直事業、一人ひとりが安心して暮らすことのできる社会づくりなどに取り組んできました。
- TPPは下記のような問題を含んでいる、私たちの理念とはかけ離れた協定です。日本のTPP交渉への参加に対し、あらためて反対をします。
1.TPPへの参加は、食の安全や農業など、私たちのくらし全般に重大な影響を与えます。
- TPPは非常に広範な分野が対象となっており、参加した場合、農林水産業、食料自給、地域の地場産業、食の安全、共済、医療、健康保険制度など、国民の暮らしに大きな影響が出ることが予想されます。
- 特に牛肉(BSE)や遺伝子組換え食品の規制緩和に代表される食の安全の問題、一層の低下が予測される食料自給率の問題については、食の安全や農業支援に取り組んできたパルシステムとして容認できません。
- 日本は2010年に名古屋で開催されたCOP10でイニシアティブを取るなど、生物多様性保全の取り組みを国際社会に呼びかけています。TPP推進派が主張する効率化された農業と生物多様性保全型農業は相容れません。農業の多面的な機能と価値を損ねるものです。
2.TPPは共生型、互恵の協定とはいえません。
- 複数の国が参加する協定では参加国それぞれが恩恵を受けるべきものですが、実態は米国主導の下、強引な交渉が進んでいます。自国のルールを自国で決めることができなくなるということは国としての主権の放棄です。
- またこのことは、日本は一方的な被害者ではなく、日本が他国に犠牲を強いる側面も持ち合わせているということでもあります。例えば、関税撤廃で日本からの輸出品の価格が下がる、日本企業の外国進出がしやすくなるということは、その国の産業や雇用に重大な影響を与えることになります。
- 各国にはそれぞれの事情や特徴があります。TPPは、そうした国情に考慮することなく、一律のルールを強いる協定です。共生型・互恵型の協定ということはできません。
3.TPPは一握りの巨大企業や富裕層の経済優先の成長だけを生み出す協定であると考えます。
- 経済成長や規制緩和、貿易の自由化の過度の追求は、一握りの巨大企業や富裕層に富を集中させる一方で、格差や貧困の拡大、地域の疲弊をもたらすなど多くの歪を生み出しています。現在の日本が抱えている貧困や格差、農業問題、原発問題、地方の疲弊なども同根の問題と考えます。
- TPPを主導している米国の国内においてすら、雇用減少などの理由から国民の7割がTPPに反対をしているとの世論調査があります。海外の民衆連帯を通じて、一握りの巨大企業や富裕層の成長だけを生み出すTPPに反対します。
4.国民には判断に足る十分な情報が伝えられていません。
- 重大な影響が懸念される協定であるにも関らず、国民にはほとんど情報が伝えられていません。また政府は「国民的議論をおこなう」としていますが、何ら情報が伝えられていない中で、当然ながら議論もされていない状況です。
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