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掲載日:2010年6月17日

「農」を礎に日本を創る国民会議がシンポジウムを開催しました
日本の食料安全保障を国家戦略にするよう提言しました
パルシステム連合会が参加する「『農』を礎に日本を創る国民会議」は6月16日(水)、東京・千代田区の憲政記念館ホールにてシンポジウム「日本の食料安全保障を国家戦略に」を開催しました。食料安全保障をテーマにした講演やディスカッションを通じて、活発な意見が交換されました。

■生産者、消費者など400名が集まりました

会場には400名が集まりました

 パルシステム連合会が参加する「農」を礎に日本を創る国民会議(国民会議)は、認定NPO法人ふるさと回帰支援センター、JA全中、大地を守る会、生活クラブ事業連合などが参加する団体です。生産者、消費者、有識者などが一体となって日本の農業を元気にするための政策提言や広報活動することなどを目的として4月1日に設立しました。

 設立後初めての開催として6月16日(水)に行われたシンポジウム「日本の食料安全保障を国家戦略に」は、東京・千代田区の憲政記念館を会場とし関係者などおよそ400名が参加しました。


■山田農水相が来場しました

あいさつする山田農水相

 開会に際しあいさつした国民会議の堀口健治会長(早稲田大学副総長)は「現在の日本は食料の輸入がなければ国民の命がもたない状況です。日本が自ら食料を確保できるような戦略が必要です。国民会議では、食料の自給力を高める食料安全保障を提起していきます」と話しました。

 シンポジウムではまず、唐笠一雄副会長(パルシステム連合会専務理事)が「日本の食料安全保障に関する提言」の内容を発表しました。「食料安全保障」にふさわしい予算の確保や農地の多面性を支える制度確立、水田を活用した増産政策への転換などを提言し「農業を産業として発展させることが重要です。提言に基づく食と農を通じた世直し運動の輪を広めていきましょう」と呼びかけました。

 その後、来賓として会場に到着した山田正彦農林水産大臣があいさつしました。山田農水相は「日本の農業は10年後すらみえない状況です。生産者が持続して、安心して農業に取り組み、食料自給率を上げていけるようなしくみをつくらなければなりません。国民全体で日本の農業、食料への理解を深めてください」と期待しました。


舟山政務官は政府政策について解説

■舟山政務官より農業政策の概要を紹介

 続いて農林水産省から舟山康江農林水産大臣政務官が「日本の食料安全保障について」をテーマに講演を行いました。船山政務官は、世界各国の食料安全保障政策と各地で発生している食料をめぐる問題、さらに日本における農業の現状を紹介した後、今年3月に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」について解説しました。

 舟山政務官は「基本計画が閣議決定したということは、農林水産省だけでなく政府全体で取り組むという意思決定です。このシンポジウムが契機となり、国民全体の議論へとつなげていきたいと思います」と抱負を語りました。


■活発な意見が飛び交ったディスカッション

盛り上がったディスカッション

 引き続き行われたディスカッションでは、高橋公副会長(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター常務理事)の司会で、舟山政務官に加えて大西雅彦氏(全国農協青年組織協議会会長)、見城美枝子氏(エッセイスト、ジャーナリスト、青森大学教授)、養父信夫氏(「九州のムラヘ行こう」編集長)、盛田清秀氏(日本大学教授)を招き、生産者、消費者などそれぞれの立場から討論しました。

 話題は、学校給食による食育活動や直売所の成功事例など広範におよびました。パネラーからは「国内の生産者を応援するためには買い支えることが大事」「海外の土地を購入し農業へ投資することは食料安全保障対策にならない」「いっしょに田畑で汗を流すことが相互の理解につながるのでは」などの意見が飛び交いました。

 会場の参加者からは「給食用の野菜作りは『孫のために』と呼びかけたら多くの賛同者が集まりました」「病院で直売所のプロモーションを実施したところ好評でした」などの取り組み紹介や意見交換が活発にされました。

 また、国民会議では各政党に対し食料安全保障政策についてのアンケートを実施し、回答が参加者へ配布されました。


【関連】

「『農』を礎に日本を創る国民会議」設立総会 「農」の再生をめざし広く行動を呼びかけます


●シンポジウムで発表した提言の内容

2010年6月16日

日本の食料安全保障に関する提言

「農」を礎に日本を創る国民会議

私たち国民会議は、国の基である「農」を再生させ、日本の「食」を安定的に確保するためには、農業生産額と農業所得を増大させて農業・農村を元気にすることが必要であり、食料安全保障を国家戦略として明確に位置づけることが不可欠であると考えています。

食料安全保障とは、食料危機が起こったときにいかに食料を確保するか、どれだけ自国の農業資源を活用して国民に必要な食料を供給できるかという問題です。食料が他の財と異なる最大の特徴は、人間生活や生命維持に不可欠な必需品であるということです。自国民が苦しい時に、生命維持に不可欠な食料を他国へ分けてくれるような国はありません。一週間でも供給が途絶えれば飢餓が生じます。農業は土地(農地)が生産に決定的な役割を果たし、他の生産要素で代替できません。

以上の視点を踏まえ、日本の食料安全保障の確立に向けて提言します。

  1. 【総合】「食料安全保障」にふさわしい予算の確保と総合的な政策を
  2. 【多面性】環境、治水といった農地の多面的機能を支える制度の確立を
  3. 【水田】水田を最大限活用した増産政策への転換を
  4. 【担い手・農地】多様な担い手の確保・農業所得増大と農地の有効活用を
  5. 【環境】有機農業を中心とする環境保全型農業の推進を
  6. 【畜産】地域資源を循環させた「日本型畜産」の確立を
  7. 【貿易】輸出振興支援と適切な国境措置の堅持による新たな貿易ルールの確立を
  8. 【社会】共生と安心の農村地域づくりを
  9. 【都市】都市生活者の消費見直しと農業への参加促進を
  10. 【産業】6次産業の推進を
  11. 【中山間地】中山間地農業を復活させる明確な政策を

1.【総合】「食料安全保障」にふさわしい予算の確保と総合的な政策を

(ア) 世界の食料需給が構造的なひっ迫に転換しているなかで、自給率の極端に低いわが国における「食料安全保障」は、適切な国内生産の維持を基本に、備蓄と輸入の組み合わせで確保すべきである。農地の確保と利用集積ならびに多様な担い手の確保・育成による生産基盤の維持拡大により食料自給力を強化することを基本とすべきである。

(イ) 「食料安全保障」という観点に見合う予算を投入すべきである。あわせて農山漁村が有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、生物多様性、CO2の貯留機能、景観の形成といった「多面的機能」を守り育てることの重要性を認識し、主食である米は備蓄拡大を図りながらODA等によるアジア、アフリカ、中東などへの食料援助など、総合的な視点から食料自給率の向上をめざすべきである。

(ウ) 農業の「多面的機能」の発揮、食料の増産と安定供給、担い手の確保・育成、農業・農村の活性化などを実現するためには農業所得の増大が必要であり、農業所得の増大に向けた目標を設定するとともに、米をはじめ大豆、小麦、野菜、果樹、畜産などの品目別目標や地域別目標を設定することが必要である。また、農地の確保、耕作放棄地の解消、新規就農者数などの目標も掲げていく必要がある。

(エ) 少なくとも国が掲げた食料自給率50%目標を達成するまで、最低10年は基本的に一貫した政策が必要である。

(オ) 以上の観点から、今後の税制改革に対応し、新たな財源確保を検討する必要がある。


2.【多面性】環境、治水といった農地の多面的機能を支える制度の確立を

(1) 農業が営まれ農村が維持されていることによって提供される国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承などの多面的機能を国民全体で支える直接支払い制度を確立し、農業全体の政策の基本とすべきである。

(2) ただし、戸別所得補償モデル事業については、品目ごとの特性、地域が主体的に柔軟に運用できる設計等の観点から、検証する必要がある。また、価格下落を容認するのではなく、価格安定を支援する政策とするとともに、貿易自由化を前提としない形で検討すべきである。


3.【水田】水田を最大限活用した増産政策へ転換を

(1) 食料自給率の向上に向けて水田を最大限に活用し、増産政策へ転換していくことが必要である。日本の基幹作物である米を中心に自給力向上の鍵を握る麦・大豆・米粉用米・飼料用米などを重点作物に位置づけ、地域裁量に基づく水田農業の協同取り組み促進、増産推進など具体化を図るべきである。

(2) 米は日本に最も適した穀物で日本の基幹的作物である。米政策の構造改革に取り組み、耕作放棄地を解消し、食料安全保障の基礎である農地を確保するため、とりわけ主食の生産基盤たる水田と生産技術を守り農家の生産意欲を高める施策をすすめるべきである。国民に対して、安定的な供給を行うとともに、多面的機能を有する水田を維持していくため、主食用米については、需要と供給の問題解決に取り組み、米粉用米や飼料用米等の振興により、食料増産と自給率向上を図る必要がある。なお、飼料用米については、品種改良・種子の安定供給、区分管理・区分流通などの社会基盤整備などを急ぐべきである。

(3) 農業・農村を活性化するために、農業所得の安定と増大、需給と価格の安定を図る政策が不可欠である。多面的機能に対する直接支払制度を下支えとして、需給と価格の安定に努力した生産者に対する経営所得安定対策など、作物の特性をふまえた品目政策を確立し、その上で、食料の増産、生産性向上の取り組みを支援する政策や、国産農産物の消費拡大策の強化、確立が必要である。


4.【担い手・農地】多様な担い手の確保・農業所得増大と農地の有効活用を

(1) 農業を活性化し、農業・農村の持続的発展を維持するためには、農業所得の増大が必要である。農業所得の増大目標を設定し、必要な政策の時期や手法、予算などを計画的に明示した工程表を策定する必要がある。

(2) 産業としての農業の成長を担う販売農家・主業農家(農業経営体)をさらに育成・発展させ、国内生産力、自給力を強化することが必要である。

(3) 地域農業を将来にわたって支える多様な担い手を確保・育成する必要がある。若手専業農家の育成、リタイア後の農業者育成施策、兼業農業者、家族農業経営、集落営農、法人経営等多様な担い手の確保・育成をはかるため、地域実態に応じた担い手の経営指導やリーダー育成を支援する対策を実施するべきである。また、多様な新規就農者を確保・育成する対策が必要である。

(4) 生産者の需給調整の取り組みやコスト削減による対応だけでは不十分であり、直接支払制度と品目政策に加えて販売価格や収入の変動が経営に与える影響を緩和するセーフティネット対策や金融・税制面での支援など経営対策が必要である。

(5) 農地法の改正を踏まえ、優良農地の確保と有効利用、耕作放棄地の解消を促進するべきである。農地利用は利用者本位とし、所有者と利用者の間に立って賃貸・売買を仲介する組織を強化する必要がある。農地転用に歯止めをかけ、許可する場合は公平性透明性を確保するべきである。転用規制を含む農地保全の徹底、賃貸借を含む農地の有効活用・規模拡大を図ることが必要である。


5.【環境】有機農業を中心とする環境保全型農業の推進を

(1) 有機農業を軸に環境保全型の農業をさらに推進すべきである。農薬や化学肥料の多用は環境に負荷を与えるうえ消費者の信頼を得られない。消費者の本当の支持を得られる農業とは何かを広く議論すべきである。

(2) 農業を環境政策と生物多様性戦略の中心に据え、その施策を実施すべきである。有機農業推進、環境保全型農業を拡大し、生物多様性指標を使った圃場評価と支援の仕組みを構築する。環境機能における補助金は圃場ごとに対応していくことが必要と考える。

(3) 環境保全型農業を推進するため、直接支払制度に加え、環境支払い制度を確立すべきである。

(4) 地域特性に応じた太陽・風力・小水力発電の活用や、バイオマスエネルギーの利活用、余剰米などを積極的に活用したエタノール生産・流通体制の整備や技術開発などをすすめる政策が必要である。


6.【畜産】地域資源を循環させた「日本型畜産」の確立を

(1) 畜産・酪農分野の自給率の向上は重要である。耕畜連携による資源循環型農業を発展させ、自給飼料生産への直接支払い導入と広域流通体制の整備を行い「日本型畜産」のモデルを確立するべきである。

(2) 粗飼料分野では、国産稲わらを飼料として利用し、稲WCS(ホールクロップサイレージ) 実用化拡大、放牧促進で自給率100%をめざす。濃厚飼料分野では、休耕農地を活用し小麦・大豆・コーン・飼料米の作付け拡大や、食品廃棄ロスを最小限にすることを前提にエコフィードへの取り組みを強化させ、自給率14%をめざす。

(3) 2010年春に宮崎県で発生した口蹄疫の感染拡大は、日本の畜産業の存続を脅かす非常事態と言える。諸対応への教訓をふまえ、予防対策、畜種の維持・管理のあり方および発生時の危機管理体制、被害生産者の生産・生活再生への支援策などについて万全を期すべきである。


7.【貿易】輸出振興支援と適切な国境措置の堅持による新たな貿易ルールの確立を

(1) 地球レベルでの視野に立って食料主権を確立し、食料安全保障、環境保護、人権、開発などに関する既存の国際約束との整合性を確保するため、現行交渉の枠組みの見直しを求めるなど、各国の多様な農業が持続的に発展できる、新たな農産物貿易ルールの確立が必要である。適切な水準の国境措置は、各国の農業事情に配慮した固有の農業の維持、環境保全、自給率向上のために必要であり、食料への投機を抑制し、安定的な貿易体制を構築していくことが必要である。

(2) 開発途上国における持続可能な農業の推進を通じて、飢餓・貧困を削減することが世界的な食料安全保障を高めることになる。このため、生産性の向上や農業者の販売力強化に向けた支援を続ける必要がある。

(3) 高品質な農畜産物の輸出振興を戦略として位置づけるとともに、輸出に向けた条件の整備をすすめるなど、輸出振興に対する官民一体となった支援対策が必要である。また、日本とアジアの国々が国際協調・相互扶助の理念を基礎とし、食料の輸入の多元化を図ることが必要である。

(4) 安全・安心で付加価値の高い国産農畜産物の優良品種確保など、わが国独自の新技術の研究開発を促進する農業分野における知的財産を保護する対策を強化する必要がある。種(子)も自給の概念に含めるべきである。

(5) 海外の農地の購入など農業投資によって食料安全保障を確保しようとする考えは、食料危機が発生した際に食料輸出国側が輸出規制を実施した教訓をふまえれば、カントリーリスクの高い国への投資は食料安全保障対策とはならない。 このため、海外への農業投資は、発展途上国の飢餓撲滅と食料の安定供給を目的とする国際貢献対策として位置づける必要がある。


8.【社会】共生と安心の農村地域づくりを

(1) 地域コミュニティを重視し、土地や自然といった地域環境や村の水資源保存などを協同で守る経済をめざす。農を軸とした地域コミュニティのための経済活性を育むべきだと考える。

(2) 農林水産業の活性化を軸とする産業・雇用の創出を実現することにより、農村地域社会に共生と安心を確立していくために、政府・自治体、農業者、第6次産業事業者、協同組合、NPO等が「協議会」「フォーラム」に結集、協働して推進体制を構築していくことが必要と考える。


9.【都市】都市生活者の消費見直しと農業への参加促進を

(1) 消費者自らも、消費のあり方を見直す必要がある。日本型食生活による生活習慣病の予防、お米を食べる運動、食べ残しを減らす運動を、学校教育の場や各家庭で取り組むなど、国内消費における国産農産物の消費拡大と同時に大量廃棄を削減することが必要である。

(2) 新鮮な農産物を都市へ供給するほか、緑地空間の維持による環境保全機能などの多面的機能を有している都市農業の維持、促進を図るべきである。次世代に農地を引き継ぐため、必要な諸制度や関連税制の枠組みを維持するべきである。また、農家が経営する農業とは別に、市民が自由に農業へ携われる体制づくり、市民農業に対しての政策的支援、施策の構築を図るべきである。

(3) 遊休農地の有効な活用例としてトラスト農場のモデルを全国に広げる。


10.【産業】6次産業の推進を

(1) 国家・自治体等行政、企業、NPO、協同組合を含む農商工連携等による6次産業化を推進する必要がある。

(2) 6次産業化をめざす起業家育成に力を入れるべきである。起業後の支援、創業後の資金提供を行うことを目的とした「6次産業化ファンド(仮称)」を創設し、企業等からの出資を募る。対象を農業者に限定しないファンドの形成を通じて、6次産業起業家育成の永続的な基盤とする。

(3) 農業収益拡大のために、都市との交流、グリーンツーリズム運動など生産と加工・流通・消費の連携による価値創造型の生産が実現できる体制を構築し、それに基づいた農地制度をめざす必要がある。

(4) 地域活性化のために、地域の加工業者が地域の農産物を使うことを支援するべきである。地域の農家や農協、農産加工業者、消費者が一体となり、食文化と伝統を守る「スローフード」の動きを促進すべきである。


11.【中山間地】中山間地農業を復活させる明確な政策を

(1) 国土の約7割を占める中山間地域は、食料の安定供給だけでなく、環境保全、森林、里山など生態系の基盤であり、国民のいのちとくらしを支える重要な多面的機能を持っている。総合的視点に立ち、豊かな自然環境の保全、食料生産確保のため、現行の「中山間地域等直接支払制度」を充実するとともに、対象農用地の要件の見直しを行うことが必要である。





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