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掲載日:2009年4月10日

寺島実郎、湯浅誠、高橋均3氏を講師に招き
「2009年度パルカレッジ第1回経営セミナー」を開催しました
パルシステム連合会は4月3日(金)、パルシステムグループの研修教育制度「パルカレッジ」の一環として「経営セミナー」を開催しました。2009年度の第1回は、財団法人日本総合研究所の寺島実郎会長による講演と、湯浅誠・反貧困ネットワーク事務局長、高橋均・労働者福祉中央協議会事務局長によるシンポジウムを開催しました。

 米国の金融危機に端を発した世界的不況が続いています。パルシステムでは、パルシステムグループの研修教育制度「パルカレッジ」の一環として、役員・職員を対象に、グローバル経済の行方と日本社会が直面する貧困をテーマにしたセミナーを開催しました。」


寺島実郎・財団法人日本総合研究所会長

■寺島氏講演「世界の構造転換と日本の進路を考える基本資料」

 開催に先立ち、パルシステム連合会の唐笠一雄専務理事は「近年、社会は大きく変化しています。講演とシンポジウムを有意義なものにしてください」とあいさつしました。

 第一部では、寺島実郎氏から「世界の構造転換と日本の進路を考える基本資料」とテーマに、経済の視点からみた社会の状況と日本が抱える課題、方向性について、解説しました。講演ではまず、現在の世界金融危機の引き金となった米国について触れ、「イラク戦争以降、21世紀は『血みどろの時間』と併走してきました。米国が実力以上の軍事力と消費力を持てるのは、中国や日本が購入する国債という『輸血』があるからです」と分析。「金融危機を機に、世界は無極化に進む可能性があります。そのとき、国家だけでなくNPOやNGOなど、全員が参加し新しい秩序をつくっていくことになります」と予測しました。

 産業構造については「T型フォードに代表されるように、20世紀は自動車と石油の相関、相乗効果が文明の転換させる役割を果たしました。21世紀はEV(電気自動車)、RE(再生可能エネルギー)、IT(情報技術)の相関が取って代わるでしょう。そこに目をつけたのが、オバマ政権の『グリーンニューディール政策』なのです」と語りました。それに対して日本は「ブランドは技術であり、多くの有名ブランドを抱える日本は、重層的な経済力があるといえます。近年、中国の経済力が大きくなっていますが、中国には有名なブランドはほとんどありません。このあたりが、これからの日本のあるべき姿につながるのではないでしょうか」と問題を提起しました。


■公正に分配できる社会制度の組み立て必要

 次に話題は、社会、労働問題へと移りました。寺島氏は、ワーキングプアなどが発生した原因の1つとして、ITの進化が労働を平準化したことを挙げました。まず逆の例として、大リーグで活躍する松坂大輔選手について「松坂選手は余人をもって変えられない能力を持っているからこそ、多額の移籍金で大リーグへ活躍の場を移しました」と説明。反面「IT化は、バーコードを読み取るだけというような誰でもできる仕事が増えたため、簡単にほかの人へ引き継がせることができます。労働が部品化したのです。社会制度を公正に分配できるものへ組み立てなおすことで、こうして生まれた格差を是正する必要があります。それが、新しい資本主義のかたちなのです」と話しました。

 最後に寺島氏は「イラク戦争やサブプライム問題で、“アメリカ合衆国というメカニズム”の限界が露呈しました」と、産業の実力以上の過剰消費と過剰軍事力を支えたアメリカの構図が終焉を迎えたと評しました。そして、未曾有の世界的な金融不安の中、日本が21世紀において目指すべき方向を「実体性への回帰」「自律性への志向」という言葉で表しました。

 「日本人は、個々には教育レベルが高い人材が多く、技術力、資金力がある。ただ、統合する力が弱い。一方で、問題解決の目標さえ定まれば、日本人は集結する。日本の実体である産業力と技術力に立ち戻り、自らまとまって進んでいくことが鍵です」と、日本人を「花」、まとまる力を「剣山」に例えて話しました。「アメリカのようなモノを創らないマネーゲーム国家ではなく、産業と技術でもう一度日本を創り上げていくことが、これから非常に重要になります」と寺島氏は日本創生へのシナリオを強調して、講演を終えました。


■協同、連携は転換の大きな原動力となりうるか

湯浅誠・反貧困ネットワーク事務局長(左)高橋均・労働者福祉中央協議会事務局長

 第二部では、まず労働者福祉中央協議会事務局長の高橋均氏が「30年ぶりのあたらしい時代の扉の前〜協同組合(連帯)経済への期待」と題し、低所得層が増大して低位の平準化が顕著になった社会を振り返り、広がった格差をどう今後埋めていけばいいのかとの問題意識から話が始まりました。この30年間を「品格なき拝金主義の暴走、市場が社会を席巻してきた」ととらえ、2008年末の年越し派遣村が「30年ぶりの日本社会の大きな転換点だと感じました」と話しました。そして、「協同組合セクターが、暴走を押しとどめ方向転換させることができるのではないか」と、市場経済から支えあい助け合う協同組合型の経済の可能性に言及しました。また、「小異を捨てずに、大同につくのが真の連帯。連帯経済を支えていきたい」と、目的に対して連携する合理性の重要さを会場に問いかけました。

 続いて、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠氏は、「派遣村から見た日本社会」のテーマで、これまでの支援活動経験を通じて出会ったセーフティネットからこぼれ落ちて困窮する人々の事例を語り、「健全な中間層になれない人を、日本の社会が作り出している」と厳しく指摘しました。労働環境が切り刻まれ、労働者が簡単に貧困に陥る社会になっている。このことは、貧困が増えることによって労働環境が壊れる「負の循環(貧困スパイラル)」であると湯浅氏は強調し、「この循環をどうやったら断ち切れるのか。あらためてセーフティネットを作ることです。それは、労働市場の健全性を保つ必要経費」と話しました。生活するのも仕事をするのも人間であり、経済の論理だけでは動かないのもまた人間であると語り、政治が人間のぬくもりを思い出し、経営者が人間を雇う重みを思い出すよう、さまざまなところで考え、動き出すのが解決への近道をなる。「私もその一端を担いたいと思います」という言葉で、貧困問題に立ち向かう意志を表しました。


■協同組合セクターの社会的価値、存在意義が問われている

 第二部の後半は、会場からの質問に答える形で湯浅氏と高橋によるシンポジウムが行われました。質問は、「生協と委託協力会社」「貧困ビジネス」「情報発信の偏向」「労働組合の活力低下の問題」「自己責任論」「拝金主義からの脱却」と多岐に渡りました。質問者のさまざまな問題意識に、両氏は真摯に応えました。湯浅氏は、「労働組合も生協も市民団体も、その存在にいかに社会的価値、存在意義があるか。さらに目に見える形で示せるかにかかっています」と結びました。

 パルシステム連合会・唐笠専務理事が、「事業と運動を組み合わせて社会問題を解決していくことは、もともと生協が得意とするところ。くらしの課題解決から大きなネットワークをつくっていきたい」とあいさつして、閉会となりました。




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