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掲載日:2008年11月4日

宮本太郎氏講演会「新しい福祉社会のガバナンス格差・孤立・不安の社会を超えて」を開催しました
パルシステムは10月18日(土)、東京都文京区のパルシステム連合会新大塚分室にて、北海道大学大学院法学研究課教授(比較政治学、福祉政策論専攻、政治学博士)の宮本太郎氏を招き、ガバナンス格差・孤立・不安の社会を超える新しい福祉社会についての講演会を開催しました。

 「これからの日本の福祉社会はどういう方向に進んでいけばよいか」という問題提起の宮本太郎氏の講演会に、パルシステムグループの役職員、関連会社、取引先から約60名が出席しました。グローバリゼーションによって、日本の生活・福祉保障システム、社会のセーフティネットは危機に瀕しています。生活を再構築するには、政府(行政)と市場を活用し、市民の積極的関与・参加による福祉ガバナンス(福祉を市民の統治により編成すること)が構築されなければならないと、宮本氏は説きます。


統計資料を使い講演する宮本太郎氏

■格差・孤立・不安の拡大

 「がんばろうにも、がんばれない現実があります」格差と孤立、不安が拡がっている日本の現状を、宮本氏はまず指摘しました。

 「特に若者の間で格差と貧困が進んでいます。ネットカフェや個室ビデオ、ハンバーガーチェーン店で夜明かしする日雇い派遣労働者がその象徴です」

 正規雇用者と非正規雇用者の比率を見ると、1999年の「正規77.4%対非正規22.6%」が2007年には「66.5%対33.5%」となり、確実に非正規雇用者の比率が高まっています。

 かつての日本では、企業での正規雇用バランス保持や世帯への社会サービスなど、リスクを支える仕組みがありましたが、それが弱体化し、今や一度失敗すると途端に社会的に深刻な状況に陥るようになってしまいました。

 宮本氏はさらに、格差の発生でコミュニケーションがうまくいかず、他者から認められない苦しさが“生きづらさ”として拡がっていることを懸念しました。

 「正規雇用で就労すれば、問題がすべて解決するということではありません」宮本氏は、失業率は低下しているのに、自殺者数が増加している現状にも着目します。うつ病等で1カ月以上休職している社員がいる企業の割合が増えるなど、複合的に社会不安が拡大していることを説明しました。

 グローバル市場、IT革命、金融規制緩和などで形成されてきた世界規模の投資家資本主義が、アメリカのサブプライムローン破綻以来、格差や貧困といった問題を露呈させました。宮本氏は、「投資家や市場の中の消費者が求めるものが優位とする投資家資本主義は、格差・貧困問題という不安を、生活者である消費者に結果としてもたらしたのです」と話しました。


■膠着状況を打開できないジレンマ

 北海道大学が実施した全国世論調査(「社会未来像調査」)で、「これからの日本のあるべき姿」を問うた質問に58%以上の人が「北欧のような福祉を重視した社会」と回答しました。これは、福祉が充実した社会にしてほしいという志向の現れです。一方で、その中の50%近くが現在の行政に不信を持っており、行政改革の徹底と市民の負担の軽減を求めています。福祉の充実を求めつつ、行政を信用しきれないジレンマになっています。

 「北欧諸国は財政が好調で、格差が抑制され、成長率も維持されています。“高福祉高負担”、“福祉国家は家族・コミュニティを壊す”など、福祉国家をめぐるいくつかの誤解がありますが、決してそのようなことはありません。社会的参加を保障する取り組みに力点を置く国は好調です」 では、日本も北欧型福祉に移行すればいいのか。宮本氏は、「社会サービスに関する限り、スウェーデンなどは国が役割を果たし過ぎていて、どれも画一的なものになっています。そのため多様で新しい福祉ニーズに応え切れていません」と北欧の福祉国家が抱える課題を説明しました。「これからは、企業や協同組合、NPOなどの民間の組織を中心に、市民ニーズに細やかに対応できる新しい福祉社会が求められます」と、宮本氏は新たな方向性を示しました。


■課題を超える新しい福祉社会へ

 宮本氏は、「4つの橋による交差点型の地域社会」への転換について述べました。「安定的雇用の労働市場を軸として、以下の4つの橋が架かり、人々が双方向で行き来できる社会が求められます。このことで、若者も高齢者も女性も、地域社会で多様な参加の機会が高まります」

I の橋

教育

生涯教育、高等教育

人々が学び続ける、特に必要を感じた時に学ぶ橋

II の橋

家族

保育サービス、介護サービス

育児、介護と仕事をつなぐ橋

III の橋

訓練

職業・技能訓練、職業紹介

技能や社会性を訓練し、仕事を紹介するための橋

IV の橋

健康、老齢

医療サービス、高齢者就労支援

体とこころの弱まりに対処するための橋


会場からはさまざまな質問が出された

 「国や行政提供の福祉サービスにもたれるのではなく、非営利・協同セクターなど市民主体の実践的活動が非常に重要になります。4つの橋を架ける作業を通して人と人の結びつきができ、生きる場、生きる力が生まれる。これが、新しい福祉社会です」と、宮本氏は強く述べました。

 「ビジネスを超えた市民のつながりをどう作っていくか。生協を中心とする非営利・協同セクターが本来の信頼に応え、福祉ガバナンスを推進する役割を果たすことが求められています」と、宮本氏は期待を込めて講演を終えました。







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