智子かあちゃん産地だより

私の住んでいる鶴居村は、その名どおり、冬には丹頂鶴が家の前をふつうに歩き、牛のえさを食べている光景を目の当たりにできる自然豊かな地域です。釧路湿原もまるで庭のような感じで隣接しています。12月は毎朝マイナス10℃以下になり、牛舎のなかまでしばれていました。でも昔は、鶴たちは越冬しなかったのに、最近は越冬するようになり、また冬に雨が降ることなどなかったのが、降って道路はアイスバーン状態となり、車の運転に気を遣うことが多くなりました。北海道にも温暖化の影響が出ているのでしょうか。また、この地域は親の代からの酪農家が多く、私のようにお婿さんが来ているところも半分くらいあります。幼なじみも多くて、私にとっては家族的な感じのする楽しいところです。
うちには220頭ほどの牛がいます。そのうちお乳を搾っているのは140頭ほど。あとは、若牛や子牛です。朝は4時半くらいに起き、牛舎の掃除、搾乳、子牛への哺乳、それが終わると8時半くらいにあがって朝ごはん。それから、再びえさやりや掃除、人工授精、夕方3時から6時ころまで搾乳、哺乳と大忙しです。また、牛のお産が夜中になることが多く、とくに冬場は気が付かないと凍死してしまうため、息子は毎日夜回りをしています。酪農は搾乳や牛の世話だけでなく、人工受精や、発情やお産などの兆候を見逃さないなど、牛の管理がとても重要なんですよ。私たち家族は毎日、パルシステムの組合員さんに飲んでいただく、HTST殺菌の牛乳を出荷する酪農家のひとりとして、乳質管理を徹底し、細菌数の少ない良質乳の出荷に努めています。
息子たちには、小さいころから搾乳や牛の世話など手伝わせていました。次男には早くから「家の仕事はやらない」と宣言されたのですが、長男は愛着がわいていたようで、中学3年のときには継ごうと思っていたそうです。長男は大学卒業後、5年ほど前から手伝ってくれています。お嫁さんは鎌倉の人なのですが、長男とは大学で知り合い、嫁いできてくれました。5歳と1歳の孫がいますが、とてもかわいいです。5歳の女の子は、「大きくなったら乳しぼりする!」なんて言ってくれるんですよ。
2006年の11月には、パルシステムさん主催の根釧地区酪農生産者女性部会交流会に初めて参加して、ドキドキしてきました。組合員さんに直にお会いし、いろいろなお話も聞けて、とっても元気とパワーをもらったんですよ。それから、組合員さんからいただくタオルは、ほんとうに助かっています。この場を借りお礼を言わせてください。ありがとうございます! 私は最初、牛は怖かったけど、今ではこの仕事はおもしろいと思っています。だいたい同じようなやり方で世話やえさやりをしていても、その家その家で乳量や質が違うんですよね。判断や手のかけ方などで結果が現れるというのが、自然相手の農家のおもしろさなのかなあと思っています。ここ数年、リューマチが痛み、とくに冬場は手をお湯につっこみながらの作業ですが、からだが続く限り携わっていきたいと思っています。
〈産地紹介〉
HTST殺菌の『こんせん72牛乳』のふるさとは、根室の「根」と釧路の「釧」をとった、根釧(こんせん)地区で、貴重な植物や野生動物も多く、日本最大の湿原、釧路湿原も隣接。年間平均気温が5.7℃という気候のおかげで、害虫や病気の発生が少ないため、農薬をできる限り使わず、いい牧草をつくることができ、これを食べて育った健康な牛から、『こんせん72牛乳』は生産されています。また、生産者は細菌数の少ない「生乳」を生産するために、牛舎の掃除や器具の洗浄をしたり、搾乳前に牛の乳房をふくなどして、毎日ていねいに世話を行っています。パルシステムでは、この牛の乳房をふくタオルを組合員さんに呼びかけて集め、おい しい牛乳づくりに役立ててもらう「タオルを贈る運動に、1985年より取り組んでい ます。2006年度は10万6,993枚のタオルが集まり、22年間で約148万枚となりました。2007年3月15、16日には、牛乳では初めての公開確認会を実施し、産地の視察や安全性の確認などを行いました。