和子かあちゃん産地だより

毎日朝8時には5kmくらい離れた山へお弁当を持って出かけ、冬は5時くらいまで、夏は7時半くらいまで作業するという生活が、1年365日の8割くらい。11月に入ると雪が降り出し、そのなかでの作業が私はいちばんつらいかな。2m50cmくらい積もったなか、作業小屋の雪下ろし、りんごの枝に降った雪はかんじきを履き1本1本払ったりと力仕事がひかえ、また、収穫のときに降ると山に軽トラが入らなくなるので、そりで何回も降ろすことになり大変。15年間でこれがいちばん辛かった。最近は熊が出るので、見通しをよくするためりんご山の木を払うんですが、うるしがあるとかぶれてしまい、かゆくて困っています。
でもね、りんごの仕事は、春の花の時期から育てて実がなり、収穫という、四季の移り変わりを見ながらの作業。今、紅葉がきれいですよ!収穫作業が天気のいい日は、「りんご屋でよかった!」と思います。それに、組合員さんのところへ届くのを想像しながら作業するのが楽しいんです。産地カードなどいただくと、がんばらなきゃって思います。味方といえば母。もう75歳だけど、りんごの作業もやり、一足先に戻って買い物や晩御飯の支度もしてくれてほんとうに感謝しています。
夫とは四六時中、一緒なので、昔はやさしかったんだけど、ときどき口げんかします!?「またおんなじこと聞くのか?」って。いまでも大事な仕事、摘果や剪定など、やりすぎると木や次の年の花芽を痛めたりするような作業はあまりさせてもらえない。でも雄勝では気候の恩恵で、ほとんど木と日光の力だけでおいしいりんごができありがたいです。うちでいちばん古い木は樹齢52年くらい。古くなると、より手がかかり大変なのですが、またそれでおいしい実をつけてくれるので大事にしたい。私も“自分の木”をいつか持ちたいです。剪定から摘果、葉つみなどすべて任せてもらって、自分の手で育てて実を生らせたい、それがひそかな夢です。
“ふじ”はおいしいので増やしたいのですが、収穫が雪の時期で作業が大変。なるべく斜面を避けて植えるなど工夫してますが、年をとってくるとできるかなあと危機感を持っています。“ふじ”の行く末は高齢化と後継者問題とかかわってくるかも!?雄勝も若い生産者でも40代です。
私の夢は、一生「雄勝のりんご」をつくり続け、食べてもらうことです。でも後継者不足が深刻な悩み。このりんご畑を私たちで終わらせたくないのが本音です。できることなら、宝くじ2億円を当てて園地内にりんごづくりを学べる施設をつくり、後継者を育てたい…。りんごの仕事はもう30〜40年は、いや死ぬまで続けられると思ってはいますが、でも、「りんごづくり後継者求む!来たれ雄勝へ!!!」わたしの大きな大きな夢です(笑)。
〈産地紹介〉
奥羽山脈と出羽丘陵の谷間の、2m以上の積雪となる横手盆地の最奥地豪雪地帯。12月〜4月上旬まで閉ざされ、4月下旬〜5月上旬、りんごが一斉に花開き、短い夏のあと、収穫の秋に入ります。小野小町の出生地、温泉の町としても有名で、秋の宮温泉郷、岩井洞、銀山などの名所があります。今から20年前、多摩消費生協(東京マイコープの前身)と取り引きを開始。樹体本来の活性力、生命力を高める工夫をしながら、より安全な農産物を生産しています。