――矢内さんが農業を継いで沃土会に入った経緯は。
「沃土会の出発は親父の代に遡るんです。当初、近くの(株)正直村の一員としてやっていたんですが、作った物がそこでは全量はけなくなった。そこで、当時の埼玉わかば生協、首都圏コープ連合などに産直品として出荷するようになりました」
「当時私は農協(JA深谷市)に勤めていて、いずれは農業を継ごうと思っていたんです。共済から経済に移り肥料配達などやりました。結構楽しかったし、農家に行ったときはいろいろ教えてもらいました」
「そのころ沃土会の運送の手伝いで、出荷される沃土会の野菜を見てびっくり。市場の野菜ばかり見ていたので、こんなの届けたら怒られるよ、農協じゃみんな返品だよ、と。無農薬だからキャベツなんか虫がむしゃむしゃ食っている。生協ってすごいところだなと、正直思いました。でも同時に有機、無農薬(減農薬)でもやっていけるなとも思いました」
「自分で始めて奥が深いなと感じてきています。無農薬なら何でもいいという時代じゃない。品質のいいもの、野菜本来の味がするものを追求しないとだめです」
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畑の横に積まれている有機資材の稲わら。1.5ヘクタールの自家水田でコンバイン刈りした稲わらを20キロのロールにしてある。耕起の際に畑にすきこみぼかし堆肥とする。 |
――土づくりについてお聞かせ下さい。
「私たちはカルスNC-R(※)を使い、基本は有機物を投入することによって土中の微生物を活性化させるやり方です。会員全体の品質をできるだけ統一して底上げするために、失敗事例も含めて勉強会をしています。定例会は月一回、後は年二回作付け・品目会議をやっています」
※カルスNC-Rによる微生物農法
カルスNC-Rはヨーグルトの乳酸菌や日本酒の酵母菌などを主体とした嫌気性複合微生物で蛇紋岩などを担体としている。カルスNC-Rを生・未熟の有機物と一緒にすきこむと切り返しの必要もなく、土中堆肥化が進む。堆肥化は作物の生育・収穫期間中同時進行で進み、品質のいい作物を育てると共に、圃場の改良につながって病害虫の被害を軽減する。 |
――通常の野菜とは違うという手応えを感じますか。
「特に自分の野菜は愛着もあるしうまい。味にはうるさくなりますね。興味があるから、人のも食べて比較したくなる。はっきり言って通常栽培のものはうまくない。みんなとにかく味にはうるさいんですよ」 |