「一人の金持ちも、一人の貧乏人もつくらない」 祖父も父親も漁師という漁師一家に育ち、自身も漁師にあこがれ、小学校高学年から網起こしなどを手伝っていたという金人さん。迷わず水産高校へ進学し、卒業後は父親とともに漁に従事するかたわら、野付漁協青年部長、北海道漁協青年部連絡協議会会長などの重責も担っています。野付漁協の精神に誇りを持ち、将来、自分たちの世代へしっかりと引き継ぎたいと志す33歳の青年の思いを伺いました。 櫻田金人さん
いま、野付漁協で青年部長をやっていますが、僕はまだ組合員ではないんです。野付漁協はだれでもいつでも組合員になれるわけでなく、一家族一経営者組合というかたちをとっています。僕の場合、父さんが組合員なので資格がまだありません。父さんが「代を替わってもいい」と判断したところで、組合員の資格を譲り受けることになります。それは、共同経営というかたちをとる野付漁協の特徴です。一人の金持ちもつくらず、一人の貧乏人もつくらず、恵まれた資源を組合員が公平に分かち合おうという精神のもと、共同経営に参画する組合員数を調整し、組合員の所得の安定を保つしくみが整えられています。なので僕は今、組合員である父さんから給料をもらってるんですよ。このように生活の基盤が保護されているためか、後継者がいなくて困るということはほとんどありません。また、野付の「資源を守り育て、資源量に対して漁獲量を決める」という「資源管理型漁業」の実践は、後を継ぐ僕たちにとって、とても心強い。安心して漁師を継ぐことができているのではないかと思います。 青年部は、19歳から35歳くらいまで、約70人います。これから組合員になるという人がほとんど。僕は青年部長として、組合員になる前にきちんと組合のこと、野付の状況や取り組みなどを勉強してもらいたいと考えています。これまで親父たちが積み上げてきたものをだめにするような、そんな失礼なことはぜったいにできない。しっかりと引き継ぎ、今まで以上によい組合や組織にしていきたいです。最近、消費動向や組合の経営企画などを学ぶマリン塾という講座も立ち上げました。親父たちが安心してバトンを次に手渡せるよう、僕も含め、しっかりと成長していきたいと思います。 今年から北海道漁協青年部連絡協議会の会長の重責も受け、緊張しています。北海道内10地区の漁協全体で3000人近くの大所帯なので責任も重く感じていますが、できるところから、仲間づくりや取り組みを進めています。たとえば「出前教室」は、浜にあまり触れたことのない道内の都市部の小中学校に、実際の漁のいでたちで出向き、網起こしや破れた網の直しかたなどを体験してもらう企画で、かなり好評なんですよ。いまの若い人たちは、団体でなにかやるということを苦手な人が多いですが、みんなの思いを集め、魅力ある活動を進めていきたいと考えています。 夢ですか? それは俺がなってから話す…。いやあ、まだ恥ずかしいから聞かないでください。ただ、組合のために、もっと力になれることができればと思っています。今回はこれくらいで勘弁してください。 |
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▲野付漁協青年部のみなさん(植樹活動後)。 ▲北海道漁協青年部連絡協議会「北海道さかなまつり」にて。
▲地元のえび祭りで奮闘中の金人さん。
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* 本ページの内容は2007年12月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。