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今でさえ、自給率10%台なのに……

50年ほど前まで40%前後もあった日本の小麦の自給率。けれど、1960年代後半、オーストラリアやアメリカから小麦が大量に輸入されるようになると国内生産は激減。一方で食生活の欧米化にともない小麦の需要は拡大し、多くを輸入に頼るようになりました。

希少な国産小麦の約7割を生産しているのが北海道。十勝平野のほぼ中央にある音更町で約15haの小麦を栽培しているJAおとふけの生産者・山田太さんは、「10 %台になってしまった自給率を死守するためにも、北海道の僕らががんばらねば」と意欲を示しますが、気がかりなのはTPPです。

TPP発効後の9年目には、価格差を調整するために現在、輸入品に課されている「上乗せ金」が45%まで削減される見込み。価格が下がった輸入小麦が大量に流入し、国産小麦に取って代わるのではないかと不安を感じています。

「以前、オーストラリアの農場を視察したのですが、1戸が300haも500haも小麦を作っている。生産コストが全然違うから、価格では競争にならないのです」(山田さん)

日本では今でも生産コストが販売価格を上回っているのが現状。これ以上販売価格が下がれば、多くの農家が小麦栽培を断念せざるを得ません。

価値ある国産小麦を残していきたい

輸入小麦で気になるのは安全性。たとえば、輸送時や貯蔵中の病虫害を防止するための「ポストハーベスト(収穫後)農薬」は、日本で禁止されているにも関わらず、多くの輸入小麦で使用されているといわれています。

「安心して使うことができる」という意味でも価値ある国産小麦。実際、品種改良の努力で麺やパンに向く小麦が開発されたことも追い風となり、消費者や食品の製造元、ベーカリーの間にも国産志向が徐々に高まっています。

「ていねいできめ細かな栽培は国産ならでは。安心感という強みをもっとアピールして、よい流れをこの先につなげていきたいですね」と山田さん。パルシステムが取り組んでいるJAおとふけ産の産直小麦を使った食品の開発も大きな励みとなっています。

「組合員さんから『音更のものはおいしい』と声をかけていただき、“顔が見えるっていいなぁ”と感激しました。僕らの小麦の価値をわかって食べ続けてくれる人がいる。そう思うだけで前に進む勇気が湧いてきます」

「輸入食品が安くなる」と盛んに報道されていますが、世界一厳しいといわれる日本の残留農薬基準が、TPPでは“スムーズな貿易を妨げる壁”とみなされ、緩和を要求される懸念も指摘されています。「安さ」と引き換えに「安心」を手離すことになったら……。私たちの“選ぶ”が食を守り、未来につながっていきます。

――2016年4月2回配付「TPPに対抗!生産者を応援」より