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交渉背景や協定内容を政府担当者が解説

TPP(環太平洋連携協定)交渉に参加する12カ国の政府は2015年10月に、交渉が大筋合意に達したと表明しました。パルシステムグループは「心豊かなくらし」「共生の社会」をグループの理念として掲げ、助け合いの精神を基本として、お互いの信頼を基礎とする産直事業、1人ひとりが安心して暮らすことのできる社会づくりなどに取り組んできました。パルシステムでは、TPP協定がこの理念とかけ離れていることから、交渉に反対の立場を当初より表明し、学習会や署名などさまざまな活動を続けてきました。

2月1日(月)、協定参加国による調印式を4日(木)に控え、TPP交渉の背景や詳細を知り、今後どう対処すべきかを考えるため、パルシステム新農業委員会主催の学習会を文京区・林野会館で開催しました。内容は、特にTPPの影響が大きいとされる米穀と畜産を対象とし、組合員や役職員および生産者など153名が参加しました。

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TPPを推進する政府の立場から農林水産省より小島裕章・国際部上席国際交渉官など4名の担当者を招き、TPP交渉の背景および結果について学びました。「TPPは原則すべての関税撤廃が前提の、これまでとはスケールの違う国際交渉」(小島氏)としたうえで、日本の関税撤廃率は95%であり、撤廃されなかった5%がすべて農水産物で、農水産物全体での関税撤廃率は81%であることを説明しました。

米穀については米国・豪州から追加輸入されるものの既存の枠組みを維持したとし、国内生産に与える影響は少ないのでは、との見解を示しました。また現行の関税率38.5%から16年目には9%まで引き下げとなる牛肉などの畜産については、規模拡大・生産コスト削減などの体質改善対策をすすめ、国産ブランド確立に向けた事業を補正予算などで推進していくとしました。

会場から多くの手が挙がり「国土が狭く平地が少ない日本の農業において、大きな、強い農業をめざす、という方向性は間違っていないか」「米の品種・銘柄の流出対策はどうか」「遺伝子組換えなど表示の交渉はどうなっているのか」「7年目に再協議とあるが、その際に関税がすべて撤廃されるのではないか」など、政府の対応や見解について積極的な意見交換が行われました。

組合員、生産者など多くの参加で会場は満員に

農水省・小島上席国際交渉官などが解説

「せめて自給率を守る」政策へ転換を

続いて「TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会」の幹事長を務める弁護士の山田正彦・元農相が登壇し、TPP交渉の今後と裏側について、協定案の本文を分析しました。山田氏によると、TPPによる関税撤廃で税収が1割ほど減少することから、新たな財源確保のためにも、消費増税など社会負担と連関するのではと指摘しました。また今すぐ撤廃されなかった関税についても、長期的な視野で撤廃が目論まれていると考察し「米国は農産物を“戦略物資”と明確に位置づけており、生産者への補助金の手厚さは日本と比較になりません。“もっと、強い農業を”というのは掛け声だけに終わりかねず、いま政府がやるべきは、国民のために『せめて自給率を守る』とした施策であり、理解を促すことではないでしょうか。国民は必ず納得するはずです」と意見しました。

パルシステムの今後の対応として、㈱パル・ミートの桑島雄三取締役が講演し、足元の産直産地が少しずつ、すでに崩れ始めていると懸念しました。「TPPによって一旦は食料品が安くなるかもしれません。しかし世界的な人口増加や気候変動、政治情勢の影響により、いつまでも他国からお金で食料が買えるとは限らないのです。国内の生産基盤を守り、消費者と生産者の思いがつながりあった商品を失わないよう、ともに取り組んでいきましょう」と訴えかけました。

生産者を代表してポークランドグループの豊下勝彦氏からは「さらなる大規模化には数十億を超す投資が必要であり、また畜産のための土地を平地で広げることはこれ以上難しいのが現実です。生き物を相手にする仕事ですから、従業員数もそれなりに必要としますが、働き手を集めるのは容易ではありません」と、政府が求める体質強化と実態のかい離について発言がありました。

山田氏のネクタイには「STOP!!TPP」の文字が

生産基盤維持で「心とくらしを豊かに」と桑島氏