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ホーム > 産直へのこだわり > 産直産地はいま > 第5回 大潟村 花咲農園、オーリア21(戸澤藤彦さん、高橋浩人さん)
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産直産地はいま


第5回 大潟村 花咲農園、オーリア21(戸澤藤彦さん、高橋浩人さん)
秋田県八郎潟を干拓して作られた大潟村。見渡す限り農地が広がり、縦横に水路が張りめぐらされ、日本の他の農村とは趣が違います。ここででリーダーシップを取り、新たな試みに挑戦している若手生産者、(有)花咲農園(はなさかのうえん)代表取締役の戸澤藤彦(とざわ・ふじひこ)さんとオーリア21代表の高橋浩人(たかはし・ひろと)さんにお話を伺いました。

ルポライター:コープニュース 上林裕子さん

〜『OPENまいんど』2003年8・9月号より〜

左・戸澤藤彦さん(42歳)、右・高橋浩人さん(42歳)

琵琶湖に次ぐ日本第二の湖を干拓して新しい農村をつくる…。秋田県八郎潟干拓で作られた大潟村は、新時代の農業経営を具体化した、まさに「ジャパニーズ・ドリーム」のモデルケースでした。一戸当たり15ヘクタールという広大な農地、縦横に張りめぐらされた水路…。工事着工から約10年、1967年から入植が始まりました。全国から選抜された入植者は、大規模米生産地への入植に心躍らせていたに違いありません。しかし、1970年国は減反政策を決定します。以後減反の強化、新農業政策、WTO体制、さらに来年4月からは改正食管法による米の自由流通と、厳しさを増す農業政策の中で、大潟村では若い生産者がリーダーシップを取って新たな試みに挑戦しています。(有)花咲農園代表取締役の戸澤藤彦さんとオーリア21代表の高橋浩人さんにお話を伺いました。


――広い! 見渡す限り広がる耕地
ひろーい。見渡す限りの田んぼです。
大潟村は、いわゆる日本の農村と違います。「普通農村は、家の近くに田んぼや畑があって、子どもも農作業の手伝いをさせられる。でも、ここは住宅地域と農地が別になっている『通勤型農業』だったので、子どものころ農作業の手伝いはいっさいしなかった」と戸澤さんと高橋さん。戸澤さんと高橋さんはともに二代目で同級生。高橋さんは小学二年生の時、第二次入植で大潟村に来ました。「今は道の両側や畑の周りに木々が生い茂っていますが、来た当時は木も何もないただ広大な土地が広がっていた」といいます。戸澤さんは第五次での入植で中学二年生の時。「計画された町作りで、インフラが整っていてすごくおもしろいところだと思った」。一次から五次まで入植者は582戸。

田んぼを見せてもらいました。見渡す限り広がる田んぼ、その田んぼの一枚が広い! 大潟村では大型機械が入るように田んぼ一枚が1町2反5畝になっています。「田んぼ一枚の草取りに、10人で3日かかる」とのこと。もしもアイガモ農法だったら? 「アイガモ200羽くらい必要で、しかも周囲を網で囲うと、とても大変」と、オーリア21の宮田光陽さん。


――農業はおもしろいぞ! と伝えたい
お子さんの運動会で、高橋さん夫妻。秋田では「ブラジルではできなかったスキーができてうれしい」と奥さん。
米増産を目指して入植したのに、国の減反政策が決まったことで、大潟村の中では減反反対派と受入派で割れたといいます。そうした中でもふたりの二代目は、農業に進むことには何のためらいもなかったようです。高橋さんは「親が大きい経営を求めて大潟村に来たのだから、自分はもっと大きい経営を」と大学卒業後アメリカ・オレゴンに農業研修に。帰ってきてフィリピン、ブラジルと様々な国の農業をみてきて「アメリカ型大規模農業でも経営は厳しく、フィリピンのような小規模農業でも人々は明るく暮らしていた。農業はその国に合ったスタイルがあっていい」。でも、最大の収穫は、ブラジルで出会った奥さんかも知れません。

戸澤さんは秋田県南の農家の27代目。後を継ぐのは当然のことと考えていたとのこと。その戸澤さんは「農業はこんなにおもしろいぞ」と、子どもたちに言ってやりたい、といいます。そうは言っても厳しい環境の中、経営的に成り立たせていくには「どの面積で、何人が見合うかたちで再生産できるか。また、誰とパートナーシップを組むか、見極める必要がある」「販売先も一カ所だけでなく危険分散をすること。それだけ情報も集まってくる」。しかし、「価格が安くても買ってほしい相手、高くても売りたくない相手がいる」といいます。そのわけは、「農業は生き方であり、命を育む食べ物を生産する。自分の考えも曲げたくない」と語ります。

高橋さんは「家族でやっていくときに労働のピークがある。そのバランスが大事」だといいます。高橋さんのところでは田んぼは高橋さんが、野菜はご両親と分担しているそうです。


――国は農業の構造改革を
WTO体制のもとでは、どこまで関税を引き下げるかでせめぎ合っていて、どう転んでも厳しい価格競争に巻き込まれるのは必須です。どう生き延びていくのか、高橋さんは「自給率の視点を持つこと。そのもとで持続的な農業をどうしていくか」「国としては直接所得保障など農業の構造改革を」と考えています。

戸澤さんには、国は大規模化で国際競争を乗りきろうとしているが、どう考えるか聞いてみました。「大規模化とは、他人の田んぼを集めることですよね。後継者がいない場合はいいかもしれないが、農地を搾取しあうのはいやです。仲間がいてこそ、楽しく農業ができる」と語ります。


――干拓の村だからこそ環境創造を
花咲農園の「特別栽培」認証取り組みの宣言文。
2001年6月、大潟村では、村ぐるみで環境に調和した農業と暮らし方を実践していこうと「21世紀大潟村環境創造型農業宣言」を発表しました。戸澤さんや高橋さんが中心となって進めるこの「大潟村環境創造21」の活動は、干拓という環境に負荷を与えて誕生した大潟村だからこそ、環境と共生する農業を進めていきたいとの思いから始まりました。大潟村は湖の周囲に水路を残し、堤防で周囲を囲んでできています。調整池となっている八郎湖は閉鎖系水域で、水質の悪化が問題となっています。秋田県立大学・谷口吉光助教授は「大潟村から出ていく排水の水質がよくなることで、八郎湖の水質がよくなり、さらに周辺市町村に働きかけて、共に水質をきれいにすることができれば」と期待しています。 


――生協はおもしろい
最後に首都圏コープについて聞いてみました。「生協はおもしろい。現場を伝えることもできるし、ユーザーの声を聞くこともできる。しかし、組織が大きくなると距離が遠くなるのが心配。小さいときのよかった部分を大事にしてほしい」と戸澤さんは結びました。


村をはしる主要水路。ここからさらに網の目に水路が張りめぐらされている。
■大潟村メモ
◎(有)花咲農園
1998年設立。代表取締役・戸澤藤彦。現在20代から60代まで50名が参加。米を中心に大豆、にんにく、パプリカなどを生産。住所は秋田県南秋田郡大潟村東4-47-1。

◎オーリア21
「農業から21世紀の環境と交流を考える会」の英文頭文字をとってオーリア21と名付けた。高橋浩人代表。会員10名。あきたこまち、大豆、メロン、かぼちゃ、にんにくのほか花卉、農産加工品を生産。住所は秋田県南秋田郡大潟村字東2-6-11。
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